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2020.07.20

産科における超音波エコー検査の意味

超音波エコー機器が産婦人科に導入されて
およそ50年が経過しました。

従来の白黒の2Dエコーに加え、
最近では3D(立体)、4D(リアルタイム立体動画)
という精密なエコーが登場し、
妊婦健診では、毎回必要不可欠な存在になっていますよね。

妊娠中、
まだ見ぬおなかの赤ちゃんに会えるのは嬉しいですよね。
妊婦健診での最大の楽しみは
エコー検査と言っても過言ではないかもしれません。

産院選びの基準として、
入院生活の快適さ、食事の豪華さなどと同様に
最新鋭のエコー機器を備え、
精密な赤ちゃんの動画を健診のたびに
観られることを最優先に考える妊婦さんもいると思います。

産院側も、
そんな妊婦さんたちの期待に応えたいと
3D、4Dなどの最新エコー機器を導入したり、
胎児のエコー写真、動画をサービスとして
プレゼントしてくれるところも多いですよね。

ですが実は、
妊婦健診のたびに毎回エコー検査をする日本は、
世界的には珍しいって知ってました?

海外では少々事情が違います。

例えばアメリカ、イギリス、カナダでは、
妊娠したかも?と思ったら
産科ではなくまずはかかりつけ医のところに行きます。

妊娠が確定したら、midwaife(助産師)を紹介され、
異常があればすぐに産婦人科に紹介する
緊密な連携があること前提で
病院ではない施設で妊娠経過を診ていきます。
妊婦健診ですることは、問診と胎児心音のチェックのみ。

エコー検査が行われるのは通常、
胎児の形態観察を行う16w前後と、
胎盤の位置を確認する35w前後の2回だけです。
エコー検査を受けるときは、
産婦人科の専門のクリニックに行くという国が多いです。

日本では
異所性妊娠(子宮外妊娠)などの異常早期発見のためにも
妊娠初期のエコー検査には大きな意味があると考えられているのですが、
海外では初期のエコーさえ行いません。

異所性妊娠は、
発見が遅れると卵管破裂で
大出血を起こしてたいへんなことになるのですが・・・
それでもエコーはしないんです!!

なぜなのか。

「妊娠初期の胎児に
頻繁に超音波を当てることが果たして安全なのか?」

海外はその部分を考慮するのだそうです。

もちろん、
産婦人科領域で使われる超音波エコーは生体に対し
安全であることは考慮されているのですが、

超音波の振動エネルギーは
生体組織が吸収するときに
細胞が障害を受けるという事実があります。

ですので海外では
対象部位と体積、音響強度などを考慮し、
必要最低限の照射時間を用いることが
重要だという考えが基準になっていて

必要最低限の検査回数に加え、
助産師が「気になる所見がある」と判断したときのみ
医学的に必要とされてはじめてエコー検査が追加される方法が
とられています。


ちなみに妊婦の体重測定は無意味として
まったく行わない国が多いです。
これも価値観の相違〜びっくりするー( ̄◇ ̄;)

また、日本では
倫理的、道徳的な考え方から
染色体異常のサインをチェックする出生前診断には賛否両論がありますが
海外では当たり前のように
染色体異常に関するスクリーニング検査が行われます。

医学的適応のないエコーは
膨大なコストと時間が奪われるだけだからやらない。

でも合理的な出産を目指すためには
染色体異常スクリーニングは行う意義がある。

何が正解で、何が間違いっていうのは
もちろんないと思うけど、
日本人のわたしがただ言えるのは

世界は広いなぁ・・・

ということでしょうか。(笑)

フランスは出産予定日直前でも健診は月1回だし、
血液検査や尿検査さえも専門のラボへ行って受けます。

スウェーデンでは
妊娠経過に問題がなければ医師に会うこともなく出産します。

ただし、ドイツだけは日本と同等の頻繁な妊婦健診、
エコーも毎回、という濃厚さです。

ちなみに、医学的胎児診断には
胎児の身体の詳細が観察できる2Dエコーがもっとも優れているので
ぶっちゃけ3Dや4Dは、診断上ほぼ使うことはありません。

にもかかわらず最新鋭の4Dを導入するのは、
日本の産科が、サービス業と化しているからなんですね。
(4Dエコー機器は、新築土地付き住宅を建てるより高額です!)

日本でも、医学的に最低限必須と考えられるエコー検査は
妊娠初期に1回、12w頃に1回、
中期以降は、20、28、34w
計5回で十分だ考えられています。

分娩数の多い大病院などでは、
サービス的要素よりも医学的適応、機能性重視、
医療提供の効率化やコストカットを考え
必要最低限のエコーしか行わないところもあります。

だって、4Dしたところで何の診断もできないのに
余計に時間がかかって
妊婦さんの待ち時間を増やすだけだから。

つまり、「医療」という観点からいうと
検査回数が多いから、写真や動画をくれるから、といって
必要な検査がきちんと行われているとは限らないのです。

エコー検査に対する正しい知識を持っていなければ、

『精密4Dエコーを毎回行う=安心して任せられる産院』

『毎回エコーをしない=この産院大丈夫なの?』

っていう先入観を持った判断を
してしまいがちかもしれません。

診断以外の医療サービスとしてのエコー検査
医学的に必要なエコー診断

それぞれに意味がある
ということを分けて考えてみると、
また違った世界観が見えてくるかもしれませんね。

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