カンガルーケア(1)
生まれた直後の赤ちゃんを
裸のままママの素肌に胸と胸を合わせるように抱かせ
その上から温かい掛け物で覆う介入を
skin to skin contact
『カンガルーケア』
といいます。
従来、カンガルーケアは
保育器のない途上国で生まれた早産児や未熟児たちが
劣悪な環境の中で
パパママじいじばあばの素肌に包まれることで保温され
失われる命を少しでも減らすことを
目的としたケアとして編み出されました。
日本では、
NICUやGCUに入院中の
『全身状態が落ち着いている』
低出生体重児や
早産児を対象にして
親子のメンタルケア目的として行われていました。
小さく生まれた赤ちゃんは
退院までに数ヶ月もかかることがあり、
親子の触れ合いの欠如は長期間にわたります。
小さく生まれたことによる障害や
発達上の問題など、
パパママは大きな不安を抱えることになり
一緒に生活することができない状況に
だんだんわが子である実感が薄れてきたり
目をそむけたくなったりするのは
しかたがないことだと思います・・・。
そんなパパママたちの
グラグラな気持ちを支えたくて
NICU、 GCUでの赤ちゃんとの肌の密着で
少しでも愛着が増しますように・・・
それが日本の周産期医療における
カンガルーケアの本来の目的なんです。
それがいつしか、正常なお産で生まれた
健康な赤ちゃんへのケアとしても
多くの産院で行われるようになりました。
カンガルーケアは、
『健康な新生児においても母子の絆を深め
母乳育児が円滑になりやすく
赤ちゃんの体や情緒の安定に効果があることが
明らかになっています』
と、日本産婦人科医会は言ってます。
2000年以降、
マタニティー雑誌などでも特集が組まれたりして
多くの妊婦さんが
カンガルーケアをバースプランに
取り入れる風潮になっていきました。
ただ、医会は
『正常なお産であっても
生まれた直後の赤ちゃんは
呼吸循環ともにとても不安定な時期にあることを認識し、
安全管理をお願いします』
という注意勧告も同時に出していて
・・・ん?
「効果はあるし、勧めるけど
危険やから気つけや」
正反対なことが書いてある?
正常なお産で生まれてきた新生児は
健康なんか?
不安定なんか?
どっちやねーん!
新生児は、
生まれてから数分、元気だと思っても
そこから時間がたつにつれ、
呼吸や体温の異常が出てくることは
珍しいことではありません。
なので、健康な新生児
正常なお産であっても
出生直後の赤ちゃんは
呼吸循環ともにとても不安定な時期にあって
突然に、生命の危機に直面することがある
ということですよね。
チアノーゼ、羊水や肺水による気道閉塞、
窒息、無呼吸、低体温、低血糖など
生まれて2時間までの赤ちゃんは
何が起こるかわかりません。
胎内から急に外の世界に出てきて
呼吸も循環も体温も
生命維持のすべての機能を必死で
この世界に適応させていく出生後2時間・・・
そんな不安定な赤ちゃんを
裸のまま(バスタオルはかけますが)
ママのおなかの上にうつ伏せにするのって
よく考えてみればチャレンジャーな話です。
カンガルーケアのガイドラインには
『出生後30分以内から、少なくとも最初の2時間、
または最初の授乳が終わるまでカンガルーケアを
続ける支援をすることが望まれる』
と書いてあります。
そして
安全なカンガルーケア実施のためには
『モニター装着を』
と。
モニターっていうのは、
赤ちゃんの足の指に小さなセンサーを貼って
血中の酸素濃度をモニターする機械です。
出生直後で呼吸状態が不安定な時期に
急に無呼吸になったり
なんらかの原因で酸素濃度が下がると
アラームが鳴る仕組みになっています。
通常、正期産の赤ちゃんで
モニター装着が必要になるのは
皮膚が白っぽいとか、呼吸障害が見られるとか
新生児仮死で生まれてきて
しばらく念入りな観察が必要なときぐらいでしょうか。
なのに、カンガルーケアをする赤ちゃんには
例外なくモニターを装着する必要がある
というのは・・・・
どうとらえたらいいのでしょう。
モニターをつけてまで
自然なで豊かな母子関係の早期確立のための
カンガルーケアって・・・
本当に必要なんだろうか
と、思ってしまいます。
自然に、正常なお産で
生まれてきた健康な赤ちゃんに
発見が遅れれば蘇生術が必要になるようなことを
あえて行う意味って?!
→明日につづく