タンパク尿が出るってどういうこと?
「妊婦健診でときどき
タンパク尿が出るんだけど
大丈夫なのでしょうか・・・。
そもそもタンパク尿って何?」
という質問をいただきました。
順調な妊娠経過でも、
タンパク尿が±
偽陽性になることがしばしばあって、
ドキッとさせられることがあります。
タンパク尿とは
いったい何なのでしょうか?
どんなときに出るのでしょうか。
よく知らない人も多いと思うので
お話してみたいと思います。
腎臓は
血液中の必要なものと不要なものを選り分けて
不要なものをろ過して尿を作り
体の外に排出する
フィルターのような役割をしています。
タンパクはわたしたちの体にとって
とても大切な成分なので
元気なときは尿に混じることは
ほとんどありませんが
風邪をひいているとき、
疲れが溜まっているとき、
運動のあと、
長時間立ちっぱなしだったときなどに
一時的に腎臓のろ過装置に負担がかかって
わずかなタンパクが
尿に染み出してしまうことがあります。
とくに妊娠中は免疫力が低下し、
膀胱炎からの腎炎にもなりやすい上に
腎臓は、自分の血液だけじゃなく、
赤ちゃん分の血液のろ過も
しなくちゃいけません
妊娠後期にもなると
腎臓は2人分の仕事を課せられ
常にオーバーワーク気味。
その結果、生理的に
尿中にタンパクが出やすくなります。
タンパク尿±1の偽陽性は
単に腎臓のオーバーワークが
原因であることがほとんど。
ゆっくり休めば簡単に回復します。
多くの妊婦さんはこのパターンだと思います。
+1以上、+2、+3の
高度なタンパク尿が2回以上続けて出た場合に
病的だと判断されます。
のちに妊娠高血圧腎症(高血圧+タンパク尿)に
移行する可能性があるため注意深く
みていきます。
腎臓は働き者なんです。
血液をいつもきれいな状態にしておくという
重要任務を果たすためには
ろ過装置に豊富な血液を
送り込んでもらう必要があります。
なんらかの理由で
腎臓に入ってくる血液量が少なくなると
「血液足りない!
もっとこっちに運んできて!」
腎臓は自ら血圧をあげるホルモンを分泌して
血液流入量を増やして
仕事を遂行しようとします。
一見、理にかなった
素晴らしい腎臓機能のように思えますが、
血圧が高くなると
強い圧をかけてむりやり血液を流そうとするので
身体中の血管の壁が傷つきます。
ろ過をスムーズに行うために
よかれと血圧を上げたにもかかわらず
腎臓の血管も傷めつけられます。
結果的にろ過装置がうまく働かなくなり
体に必要なものを尿に排出してしまったり
不要なものを体内に残してしまったりします。
そしてそれがさらに血圧を上げるという
悪循環が起こります。
腎臓は赤血球を作る働きもしているので
機能障害が起きると
酸素、栄養を運ぶ赤血球も作られなくなり
貧血も起こります。
タンパク尿だけでは
胎児に影響はありませんが、
血圧が上がることで胎盤の血管壁も破壊されます。
血管が収縮してさらに血流が悪くなり
胎盤から赤ちゃんに栄養や酸素がいかなくなり
胎児発育不全が起きます。
やがて母体の各臓器にも栄養や酸素が
行き渡らなくなり、
腎機能障害、肝機能障害が起き、
血管そのものがもろくなり
収縮してしまうことで
母体の脳出血、けいれん、
妊娠中に胎盤が剥がれてしまう
致命的な事態に発展することもあり、
妊娠中に発症する高血圧は
侮ってはいけません。
従来、高血圧のみの場合を
『妊娠高血圧症候群』
そこへタンパク尿が加わって
『妊娠高血圧腎症』
と位置付けていましたが
2018年にガイドラインが変更になり
タンパク尿がなくても
腎機能、肝機能低下、胎児発育不全があれば
妊娠高血圧腎症と診断されるように
なりました。
○水分をこまめに摂ること。
(一気飲みは腎臓に負担をかける)
○塩分摂取を控えること。
○カリウムをしっかり摂って塩分排出!
(バナナ、さつまいも)
○糖分(炭水化物)を控えること。
○疲れを溜めないこと。
妊婦健診で血圧が高め、
タンパク尿±1が出るときは
赤ちゃんの分まで腎臓ががんばって
くれている証拠!
生理的なタンパク尿を
病的なタンパク尿に移行させずに済むよう
上記5項目を意識して、
がんばる腎臓さんを「ありがとう」の気持ちで
労ってあげてくださいね。
【本日の動画♪】