卒乳の時期、いろいろ
「卒乳」とは
赤ちゃんが自分からに母乳を必要としなくなり
ママが誘導することなく自然におっぱいを
卒業していくことをいいます。
一方「断乳」とは、
ママの意志によって
授乳をストップさせることをいいます。
厚生労働省の「授乳・離乳の手引き」では
卒乳をこんなふうに説明しています。
「卒乳とは、赤ちゃん主体で行い、
自然に母乳を欲しがらなくなるまで
授乳をつづけることである。
赤ちゃんの成長や発達、
家庭環境によって、
赤ちゃんが母乳を必要としなくなる時期は
個人差が出てくる。
そのため
“何ヶ月になったら母乳をやめる”
といった時期を決めることは難しい」
ばぶばぶでは
「子どもが欲しがる間はなるべく長く
1歳でも2歳でも、
いつまででも授乳を続けていいですよ」
とアドバイスをしていますが
赤ちゃん主体という立場からいえば
長く続いていく授乳生活は結果論であって
めざすものではないんですよね。
子どもが卒乳を迎えた時期はいつごろで、
どんな感じで終わっていったか?
卒乳ケアで
ばぶばぶに来られる親子さんを見ていると
本当にさまざまなドラマがあります。
1歳すぎる頃からおっぱいへの執着が増して
常におっぱいにぶらさがっている感じになり
3歳のお誕生日を機に
自分から「おっぱいバイバイする」と宣言して
本当にその通りにやめてしまった
とか
離乳食のほうがいいみたいで
次第におっぱいを欲しがらなくなり
2〜3日に1回思い出したように飲んだり
飲まなかったりしているうちに
1歳頃には気づけば終わっていた
とか
10ヶ月のときに
ある日突然「いらない!」って拒絶されて
それ以来どんなに促しても
飲んでくれなくなった
とか
2人目を妊娠した途端
味が変わったのか
急に欲しがらなくなった
などなど
卒乳の時期、パターン
千差万別、一律ではなく
本当にいろいろです。
ごはんをしっかり食べるようになり
なんとなく授乳回数が減って、
なんとなくおっぱいを飲まなくなって
気づけば終わっていくケースは
ごく自然な形の教科書どおりの
理想的な「卒乳」かもしれないですが
実際、ばぶばぶでは
子ども自らなんの予告もなく
ある日突然“その時“を決める「卒乳」にも
よく出会います。
いきなりパタッと飲まなくなった!
というケースでは
まだまだ授乳続行と思っていた
ママの心とおっぱいが、
その急激な変化についていけず
面食らいますが
子どもが「いらにゃいー!」(いらない)
と拒絶してるのだから
受け入れるしかありません。
それも子どもの成長なんだと前向きにとらえて
ママも気持ちを上手に切り替える必要があります。
なかには生後半年未満でも
急におっぱいを拒否する子もいます。
母乳栄養推進の世の中では
長くおっぱいを続けることが「いいこと」
「ママのステータス」のように
思われがちですが
どれが正解で不正解と
いうこともないと思います。
WHOでは、
「生後6ヶ月までは母乳栄養を!」
「2歳までは授乳を続けましょう」
と提言していますが
6ヶ月とか、2歳とか
その数字を叩き出す根拠はどこにあるのか、
微妙なんだよな〜〜。
ママたちのおっぱいを診ていて思うのは
授乳期間も人それぞれ、
完全母乳、混合栄養、ミルクオンリーなど、
その内容にも多様なバリエーションがあります。
子どもの成長・発達のペースや順序だって
まちまちです。
その多様性の全体像を示す
データは存在しないのが実情なのに
「平均」「標準」という
スタンダードな尺度に
すべての子ども、
すべての子育てを当てはめて
いつまで母乳を飲ませるかという目標数値が
定められてしまっているのは
見据えるゴールとして柔軟性がなさすぎるし、
没個性で時期尚早な思考な気がします。
授乳は、赤ちゃん主体のはずです。
助産師の立場になると、
早い時期に卒乳をしたのは
ママへの支援がうまくできなかったから
ととらえがちだけど、
「母乳をやめる時期」を
決めるのも難しいのですが、
反対に3ヶ月でやめた赤ちゃんのように
早く卒乳する赤ちゃんもいるわけで、
「何ヶ月まで飲ませる」と決めることには
無理があると実感しています。
『母乳育児支援スタンダード』
(医学書院、2007年)では、
生後4ヶ月までの赤ちゃんのママが
卒乳を考える理由を
以下のように説明しています。
困ったときの情報や
支援が不十分なために、
母乳育児を続けることが
困難になっていることが多い。
乳頭の痛み、乳頭混乱、
母乳不足感、母乳分泌過多、
乳腺炎、職場復帰、
薬の内服などである。
いずれの場合も、
適切な情報と支援があれば
ほとんどの場合
母乳育児を続ける事が可能である。
確かに。
助産師が正しい方法で支援すれば
母乳栄養はほとんどの人が
可能だと思います。
でも、だからって
3ヶ月で卒乳しちゃう赤ちゃんがダメだとか
ママの頑張りが足りないとか
そういう単純な決めつけをするのは
違うと思うし、
母乳育児推進団体の
「授乳をできるだけ長く続けよう!」
とする提言の数々が、
ママたちを無意識に追い込んで
いるような気がしてなりません。
赤ちゃんの気持ちを大事にした
「卒乳」という言葉を使いつつ、
早く卒乳することは
ママ側の問題であり、
うまく授乳ができないことが理由だ!
と、早期の卒乳の原因が
赤ちゃん主体ではなく
ママ主体にすりかえられ
ネガティブにとらえられて
いるような印象を受けます。
早い時期の卒乳もあり得る!
これが、
ばぶばぶで日々出会う現実です。