はしかじゃないよ、乳腺炎だよ！

兵庫県を中心として、
関西ではしか（麻疹）が流行しています。

真夏の関西国際空港から始まり
またたく間に空港の従業員、医療関係者、
近隣のショッピングモールと
感染が広がっていきました。

はしかは、症状が出る４〜５日前から
感染力があり、気づかないうちに
周囲に広げてしまうんですよね。

そして、はしかウイルスは、
他のさまざまな感染症と比べても
驚異的な感染力を持ちます。
空気感染や飛沫感染などで広がり、
免疫を持っていない人が感染すると、
ほぼ100％発症します。

感染から２週間弱で
発熱、咳、鼻水など、風邪と似た症状が現れます。
２〜３日ダラダラと熱が続いたあと、
再び40℃の高熱になり、
同時に発疹が出てきます。
そのまま肺炎、中耳炎を合併したり、
1000人に1人の割合で脳炎を発症すると言われていて
子どもだと命を落とすことも・・・。

現在では、公費負担の定期接種で
1歳と小学校入学前1年間の計2回、
はしかと風疹の混合ワクチン（MR）が実施されています。
きちんと２回接種していればしっかり免疫がつくので
はしかに感染することはほとんどないと
言われています。

だけど、はしかの発症は1歳代が最多なんです。
母体から受け継いだ免疫が消え、
かつワクチンを接種し免疫抗体を得る前に
感染したケースが多いためと思われます。

なので、ワクチン接種はなるべく早く、

１歳のお誕生日＝MR接種！

誕生日プレゼントが注射って
かわいそうですが、
それぐらいの気持ちでいてくださいね。

はしかは、1歳代に次いで、
生後6～11カ月で罹ることが多いそうです。
赤ちゃんはママから受け継いだ移行免疫を持っていて、
ママが麻疹ウイルスに対する免疫抗体を持っていれば
赤ちゃんにも移行します。

移行免疫は生後6カ月頃まで持続するので
生後6カ月以降はあらゆるウイルスや菌に対して
無防備な状態になるといえます。

生後6カ月から11カ月でのはしか羅漢率が高いのは
母体由来の麻疹免疫がなくなったため。
そしてワクチンの接種前であることが
理由のようです。

ならば、MRの定期接種時期を早めて
生後半年以降に可能に変更すればいいやん、と
思いますよね。

実際、定期接種の時期を
生後9カ月前後からとしている国もあります。
でも、この月齢でのワクチンの効果や安全性については
十分に評価されていないため、
慎重な国民性の日本では、乳児へのワクチン接種の導入は
勧められていません。

はしかは、手洗い、マスクでは予防はできません。
ワクチンだけが有効な予防法です。
また、はしかの患者さんに接触した場合、
72時間以内に麻しんワクチンの予防接種をすることも
効果的であると考えられています。

先日、ばぶばぶに小児科医をされているママが
来院されました。

３０代前半、はしかのワクチン接種が
１回だった谷間世代です。
そもそも予防接種は、一度で十分な免疫が獲得できるとは限らず、
はしかワクチンを一回接種しても、
数％程度の人には十分な免疫がつかないことが知られています。

彼女は、今年夏頃から咳が続いていて
無理が続いたせいか、とうとう数日前に
41℃の熱が出たのだそうです。
抗生剤の点滴で高熱はひとまず下がりましたが、
大人でここまでの高熱って尋常ではありませんよね。
しかも、胸部レントゲンで白い影。

・・・肺炎？

仕事が仕事だけに
彼女の頭をよぎったのは、

これらの症状は
もしかして、はしかでは・・・？

医療者なので、当然
はしかの抗体があるかどうか検査済みだし、
問題ないことがわかっています。

なので、普通に考えて
はしかは否定されるのですが、
確実なデータがあっても、気持ちの上でなんだか不安〜。

でも抗体持ってるんだから
どう考えてもはしかではありません。

ならこの高熱は何？

で、おっぱいを診せてもらったら
なんのことはない、
膿性の母乳が出てきました〜。

なんや、乳腺炎やん！！
高熱はおっぱいから来るものだったのですね。

「でも、しこりもないですよ？」

乳腺炎は、必ずしもしこりができるわけでは
ないですよ。
そして、体調不良で抵抗力が落ちているときにも
発症しやすいです。

熱が出たときの状況を聞くと

・急な悪寒戦慄
・頭痛
・全身の関節痛

ほら、やっぱり。
典型的な乳腺炎やん。(´Д` )
軽い肺炎と、乳腺炎を併発したのでしょうね。

乳腺炎もイヤやけど、
はしかじゃなくてよかったねー！！