授乳中の胃カメラ・大腸内視鏡検査
生後9ヶ月の赤ちゃんのママ。
現在、絶賛母乳育児中ですが
近々、胃カメラと大腸内視鏡検査を受けることになりました。
その際、静脈麻酔(ドミニカム)を使用し、
そのため検査後24時間は授乳できないと
病院から説明を受けました。
頻回授乳をしているので、
できるなら検査後も24時間あけず
授乳をしたいと彼女は考えていますが、
やはり24時間あけるべきなのでしょうか・・・。
本当は半年前に検査を勧められていましたが、
授乳を優先し先延ばしにしたのだそうです。
授乳中だというだけで、
あれ食べたらダメ、これ食べたらダメ・・・から始まって、
さまざまな規制ばかりですよね。
健康のための検査さえも
授乳中はろくにしてもらえないのでしょうか。
授乳は、哺乳類であるわたしたちヒトの子育てとして
とても自然なことのはずなのに。
こうも我慢しなければいけないことばかりじゃ
やってられません!
もっと母子に優しい医療の認知が広がり、
臨機応変に考えてもらえたら
ママたちは、もっともっとおっぱい生活を安心して
続けやすくなるのに・・・と思います。
さて。
授乳中に胃カメラ、内視鏡大腸検査を勧められることは
決して彼女が珍しいケースなわけではなく、
当たり前に起こり得ることだと思います。
ドミニカムは、気持ちを落ち着かせ
不安や緊張を和らげる働きがあります。
全身麻酔の導入、麻酔前投薬などに使われます。
食道、胃などの上部消化管内視鏡、
大腸内視鏡などの検査のときの鎮静目的でも用いられます。
ウトウトしている間に苦痛なく検査が進むので
患者さんにとってもありがたいことだし、
消化管内の見逃しのない詳細な観察が可能になるという
医師側のメリットもあります。
だけど、ドミニカムの薬剤添文書には
『授乳中は使用を避ける。
やむを得ない場合は授乳を見合わせる』
と記載されています。
多くの医師は、それに従って
胃カメラ、大腸内視鏡検査のあとは
24時間授乳を控えるように説明されるようです。
もしくは、授乳中ならば従来のように
鎮静剤を使わずに検査をしましょうと勧める先生も
いるみたいです。(拷問やん!!)
一時的断乳に必要な時間が、なぜ24時間なのか?
その根拠はどこから来てるのか?
添文書には「ヒト母乳中へ移行する」としか書いていなくて、
24時間の一定期間断乳の根拠の具体的記載は
どこにも見当たりません。
成人の麻酔導入として使われる場合、
ドルミカムは0.1~0.3mg/kgを静脈内注射します。
薬が体内に入るとすぐに効果が現れ
意識がぼーっとしてきます。
薬剤の血中濃度が最高になるまでの時間は30分〜1時間後。
血中濃度が半分以下になる時間(半減期)は、約3時間後。
そして、投与後24時間までに
投与量の80%が尿中に排出されます。
最大量の0.3mg/kgを投与されたとしても
半減期の3時間後には0.15mg/kgまで血中濃度は低下、
24時間後に血中に残るのは、たった0.06mg/kg
という計算になります。
ドルミカムは水溶性で短時間作用型なので
速やかに覚醒することが特徴であることから
生後1ヶ月以上の赤ちゃんにも使われることがあります。
小児科領域でも
けいれんを繰り返すような症状のときに使用されている実情があり
2009年、小児神経学会からも適応拡大の要請が
出されています。
麻酔導入として赤ちゃんに使う場合には
初回投与は0.05~0.2mg/kgを静脈注射し、
麻酔維持のために必要に応じて、初回量と同量を少なくとも
5分以上の間隔をあけて追加投与します。
つまり、ママが検査のために薬剤を使用しても
3時間後には赤ちゃんに直接使用する量以下の
血中濃度になるわけです。
長期連用すると
母乳移行で赤ちゃんに傾眠、体重減少等を起こすことが
報告されていますが、
ママの血中に含まれる中の、わずかな量が
母乳移行するわけですから、
単発で使用したドルミカムを含んだ母乳を
9ヶ月の赤ちゃんが飲んだところで
重篤な悪影響を及ぼすとは到底考えられないと思います。
『大分県母乳とくすりハンドブック』
によると
「授乳婦での母子へのリスクは確認されていない」
「短時間作用型ベンゾジアゼピン系薬物は
単回使用であれば授乳婦にも問題なく使用できる」
とされています。
結論!
胃カメラ、大腸内視鏡検査に伴う
静脈麻酔の際、
一時断乳をする必要はないと思われます。
どうしても気になるなら
検査開始から3時間、
薬剤の母体血中濃度が半減期を迎えるまで
授乳を見合わせたらOKなのではないでしょうか。
9ヶ月の赤ちゃんのママ、
安心して検査、受けて来てくださいね!!