おっぱいの詰まりに針を刺さないで
乳頭の先に白いものができて、授乳のたびに激痛!
次第に、おっぱいの一部にゴリゴリのしこりができてきて、
だんだん大きくなり、岩でも入っているんじゃないか?
というぐらいになってきました。
自分で搾ってみると、乳頭の白いところから
母乳は一滴も滲まず、明らかに詰まっているのが
わかりました。
何度も赤ちゃんに吸わせましたが、
一向に詰まりは取れず、痛みは増すばかりで
彼女は近くの母乳外来へ駆け込みました。
助産師の手技は激痛でした。
それでも、おっぱいが楽になるのなら・・・
彼女は冷や汗を流しながら痛みに耐えました。
マッサージは1時間半に及びました。
ゴリゴリ揉んだりしごいたりで
しこりになっている部分の皮膚には紫色のアザができました。
それでも詰まりは取れず、
助産師さんは困り果て、最終手段に出ました。
針を手に、登場です。
あれだけマッサージしてダメだったのに
針で乳頭を突いたら一発で
シュゥゥゥゥーーーーー!!!
溜まっていた母乳がほとばしり、詰まりは解消。
ゴリゴリになっていたしこりは嘘のように消えました。
時間はかかったし、めちゃくちゃ痛かったけど
楽にしてもらったことにママは大満足。
意気揚々と帰宅したそうです。
が、2日後に
同じところにまた白いものができ、
同じところにしこりができて
痛みは前回より強く、どうにもならなくなりました。
母乳外来を再受診し、今度はマッサージもそこそこに
再び針で突いてもらって詰まりは解消しました。
・・・そして今度は3日後に再発しました。
彼女は、他の助産師にも診てもらおうと
ばぶばぶに来られました。
乳頭の白いモノ。正しくは乳口炎といいますが、
通称『白斑』と呼ばれてます。
乳
頭から比較的浅い部分の乳管にできた傷だったり、
乳汁が固まってニキビの芯みたいに
詰まってしまったものだったりがその正体です。
白斑のできた部分は、
炎症のせいで腫れ、その腫れが
周囲の組織を圧迫するためにむくみが起きています。
むくむと組織は固くなり、しこりになって触れます。
放置すると、乳頭に水泡ができて
完全に母乳の出口を塞いでしまったり、
水泡が潰れて出血することも。
傷に細菌が感染すると、
全身の悪寒と関節痛を伴い、高熱が出て膿を含んだ母乳が
ドロドロ出てくる化膿性乳腺炎に
発展してしまうこともあります。
ん?なんか痛いかも?
と思った早期の時点で、
ひっぱり飲みや歪め飲みになっていないかチェック。
添い乳している場合は、一時的に中止してもらって
乳頭にかかる無理な力を解消してあげるようにします。
起こしてしまった炎症を、それ以上悪くしないよう
まっすぐおっぱいをくわえるように
正しい授乳のポジションに意識を向けてもらえると
悪化せずに済みます。
月齢の低い赤ちゃんだと、
ママがポジション調整しても素直に聞き入れてくれるのですが、
1歳近くになって自我ができてくると
子どもなりに「好きなポジション」が決まっているため
ママがまっすぐくわえてほしいと懇願しても、
好きなようにひっぱったりよじったり・・・
痛い授乳姿勢と、
痛い吸わせ方をそのまま続けることになると
何ヶ月も治らないこともあって
白斑はとてもやっかいなトラブルです。
ニキビの芯のように詰まるタイプの白斑の対処方法には
助産師によっていろいろな考え方があります。
彼女がしてもらったように
患部を針で突くという処置をする助産師もいます。
針で突けば、出口を失って溜まっていた母乳が
一気に噴き出して、あっという間に問題解決、
即効性が実感できるので
「生きててよかったー!」と思うぐらいの
爽快感を味わえます。
でも実は、
詰まりは乳頭から見えているところだけに
あるわけではないんです。
たいていは、見えているところから奥に向かって、
筋状に乳管の閉塞にがあります。
なので、見えている部分だけ針で突くという
短絡的なケアをしても
根本的なところは解消されず、母乳の流れは悪いまま。
その結果、また同じところが詰まるんですよね。
わたしは、ニキビの芯のような乳栓は
無理して抜こうとはしません。
どうして乳栓ができちゃったんだろう?
という原因に着目しなければ、
対処療法だけではその場しのぎだと思います。
根本的原因にアプローチしないかぎり、
堂々巡りは明らかです。
乳栓ができる原因はいろいろあります。
例えば、授乳のリズムが狂ったとか
前述のようなひっぱり飲み、よじり飲み、
暴飲暴食、ストレス、疲労、冷え、肩こりなど。
その人の原因がどこにあるかを見極めて、
対処するようにしていきます。
また、どの原因であっても、
乳栓ができるときは確実に血液循環が悪くなっているはずなので
しこりはゴリゴリするんじゃなく、
基底部(おっぱいの根本の部分。ブラのワイヤー部分)を
ゆっくりほぐして血液を流しながら、
乳輪から乳頭を優しくマッサージし、柔らかくしながら
乳管の通りをよくしていきます。
乳頭乳輪のむくみを改善してあげるだけでも
授乳時の痛みは劇的にましになると思いますよ。
常識的に考えてみてください。
おっぱいに青あざができるほどのマッサージが
果たして有効なケアだと言えると思いますか?
それって、
デリケートな乳腺をむやみやたらと刺激して
炎症を悪化させてるだけじゃないでしょうか。
触る部分はしこりじゃなくて基底部です。
しこりは組織の炎症か、浮腫だから、
あまり触っちゃいけないところだと思います。
母乳が溜まっていてしこりになっている場合でも、
局所的よりも広い範囲で
血流を促してあげれば、
あとは授乳で、赤ちゃんがなんとかしてくれます。
1時間半の激痛を伴うマッサージ・・・
ただ時間をかければいいってことじゃありません。
30分以上かけると乳腺組織や皮膚にも
刺激が強すぎて、逆に分泌過多になって
母乳生成のバランスが崩れ、
別のトラブルを引き起こす可能性だって
考えられると思います。
乳栓が取れた痕は
大きな傷になった白斑ができています。
細菌感染を起こさないよう
傷を大きくしないよう
授乳姿勢の意識と、
乳頭のこまめな保湿保護をお願いします!
(赤ちゃんのお口に入っても大丈夫な
安全な保湿剤を使ってくださいね!)