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2023.09.04

乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の違い。見分け方や対策は?

助産師HISAKO

執筆:助産院ばぶばぶ院長 助産師HISAKO

2006年開設の「助産院ばぶばぶ」で育児支援を15年以上担当。YouTube「12人産んだ助産師の子育てチャンネル」のフォロワーは50万人以上。自身も12子の母。

こんにちは。助産師HISAKOです。

大切な赤ちゃんの肌にプツプツ赤みが・・・。これってもしかして乳児湿疹? それともアトピー性皮膚炎? 赤ちゃんの肌の不調があると、それに連動してママの心もグラグラ不安定になりますよね。

受診の目安がわからない。どの情報を信じていいのかわからない。

そんなときは、赤ちゃんの肌に何が起きているのかをしっかりと理解することから始めてみましょう!

今回の記事では、乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の違い、その見分け方や対策を楽しく!そしてわかりやすく!解説したいと思います。

乳児湿疹とアトピー性皮膚炎は何が違うの?

乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の見分け方・・・正直とても難しいです。

なぜなら、ガサガサ、ポツポツ、赤み、ジュクジュクなど肌に現れる症状、はどちらもほぼ同じだからです。

見極めポイント、しいて言えば、家庭でできる継続的なケア(清潔と保湿)で少しずつよくなり、1歳になる頃にはキレイな肌に回復していくのが乳児湿疹。

それに対し、家庭でのケア、場合によっては病院処方のお薬を使用しても、耐え難いかゆみのある湿疹がしつこく2ヶ月以上持続、

少しよくなったかと思えば、また悪化・・・を繰り返しながら慢性化していくのがアトピー性皮膚炎です。

『乳児湿疹をこじらせて治りにくくなってしまったのがアトピー性皮膚炎』と考えるとイメージしやすいでしょうか。

未熟な肌バリア

例えば「今日は食欲がない」というとき、その原因はいろいろ考えられますよね。

前日にドカ食いしちゃった。賞味期限切れを食べちゃった。などの自業自得な理由もあれば、一過性のウイルス性胃腸炎、ストレスなど・・・

『食欲不振』と表現される状態を引き起こす原因はひとつではありません。

同じように「赤ちゃんの肌にブツブツができた」というときも、その原因はいろいろ考えられます。

大前提として、赤ちゃんの肌はバリア機能が未熟。

なんらかの刺激が肌に触れた時に『しれっと跳ね返す!』というハイレベルな能力をまだ持ち合わせていません。

いちいち過敏反応しなくていいのに、ちょっとした刺激に神経質に反応してしまう結果、さまざまな症状の肌トラブル(乳児湿疹)を引き起こしてしまいます。

とはいえ乳児湿疹は、保湿ケアを徹底し、肌バリアを整えてあげることで、ある程度予防でき、改善が期待できるものがほとんどです。

未熟な肌バリアに遺伝や体質が加わると・・・

一方、乳児湿疹の一種であるアトピー性皮膚炎も、赤ちゃん特有の肌バリア機能の未熟さが根本原因であることは他の乳児湿疹となんら変わりありません。

ただ、他と大きく異なるのは、遺伝や体質が加わり、肌症状を悪化させたり長引かせてしまうという特徴があることです。

アトピー性皮膚炎になりやすい赤ちゃんの肌をバーベキューの火に例えてみましょう。

湿っている炭はなかなか着火しませんが、乾燥した炭は着火剤の刺激にすぐ反応、火がつきますよね。

炭の乾燥の度合いで着火に差があるように、しっかり保湿された肌は刺激に対して反応しにくく、乾燥した肌は刺激に過敏に反応して炎症を起こしやすい・・・だから保湿ケアが必須になるのですね!

また、なぜか湿っていないのに着火しにくい炭もありますよね。着火しやすさの個体差・・・

つまり、赤ちゃんの肌にも『過敏性の差』という、生まれ持った違いがあり、さまざまな刺激に必要以上に過敏反応してしまう体質の子がいます。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の症状とは?

顔から始まって下へ・・・

  1. 始まりは頭、顔の乾燥
  2. 乾燥部分に赤みを生じ始める
  3. 次第に赤みが強まり湿疹とかゆみが出始める
  4. ひっかいて傷ができジュクジュクがかさぶたになる
  5. 耳周囲、口周囲、ほっぺた、あごなど顔全体、左右対称に湿疹が拡がる
  6. 首、脇の下、膝の裏、肘などの摩擦の多い部分に症状が拡がる
  7. 胸、おなか、背中、手足にも赤みや湿疹、かゆみが出現

アトピー性皮膚炎の症状は顔から始まります。

小さな火種がやがて広範囲に燃え拡がるように、掻きつぶすことで炎症が拡がり、次第に身体の下側へと症状が移行して慢性化していきます。

ママの気持ちにも影響

炎症を起こした部分には強いかゆみが出るので、赤ちゃんは機嫌が悪くなり、うまく眠れなくなったり、哺乳量が減って体重が増えにくくなることも。

赤ちゃんの肌の症状によっては、ママも大きなストレスを抱えます。

ときには育てにくさを感じ、罪悪感にかられ、気持ちが沈みがちになってしまうこともあるかもしれません。

そう考えると、赤ちゃんのアトピー性皮膚炎がもたらす弊害は計り知れませんね・・・。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎の原因は?

侵入した異物を身体が攻撃!

アトピー性皮膚炎の原因・・・元をたどれば、他の乳児湿疹と同様に『赤ちゃんの肌のバリア機能が未熟であること』です。

そこへ、肌の過敏さなどの体質が加わり、ダニ、ハウスダスト、花粉、カビ、食物などのアレルギー物質を体内に招き入れてしまいます。

身体は侵入してきたアレルギー物質を攻撃して排除しようと働き、どんどん攻撃力をあげていきます。

激しく攻撃すればそこにアレルギー性の炎症が起き、次第に拡がって歯止めが利かなくなっていきます。

この状態こそが、アトピー性皮膚炎です。

体質・遺伝と肌への刺激

パパママが気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患がある場合、赤ちゃんにアレルギー体質が遺伝しやすい傾向があります。

このように、もともとの体質にアレルギーを引き起こしやすい環境的な悪化因子(紫外線、花粉、ダニ、化学繊維、刺激の強い洗浄料など)がプラスされて、

保湿ケアだけで改善が期待できる乳児湿疹から、それだけでは改善を見込めず、もう少し踏み込んだ治療が必要なアトピー性皮膚炎へと移行していきます。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は
どうやって診断するの?

診断は、医師による肌の視診、パパママからの症状や生活環境の聞き取りなどで行います。

1)かゆみがある

2)左右対称の特徴的な湿疹

3)慢性的に繰り返す

症状の軽重を問わず、これらの症状が2ヶ月以上続けばアトピー性皮膚炎と診断されます。

場合によっては血液検査を行い、アレルギー体質の有無を確認することもあります。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は
どうやって治す?

治療のゴールは?

治療の最善のゴールは、症状がなくなること!
ですが治療によって体質そのものを変えられるわけではないので、予防と症状に対する対処療法が基本軸です。

ある程度改善して日常生活に支障がなくお薬もほとんど必要としない状態になり、それを維持できることを目指します。

治療方法の3本柱

専門的な治療方法としては、赤ちゃんの症状に合わせて以下の3点を組み合わせていきます。

1)塗り薬(ステロイド薬など)

2)保湿ケア(ローション、乳液、クリーム、軟膏など)

3)悪化因子を見つけ対策する

アトピーの炎症に特化した治療を!

ここでもう一度、赤ちゃんのアトピー性皮膚炎をバーベキューの火に例えてみます。

小さな火種(多くの乳児湿疹)は少量の水(保湿料)で簡単に消すことができます。つまり、ほとんどの乳児湿疹は保湿ケアだけで予防改善が期待できます。

それに対して、燃え上がる炎(アトピー性皮膚炎の炎症)に少量の水(保湿料)を撒いても鎮火できません。

そうこうしているうちに火はどんどん強まって、バーベキューの食材が真っ黒焦げになってしまうかもしれません!

火の勢いが激しいときには、大量の放水や消火剤(ステロイド薬)を使用して、一気に確実に消火させる必要があります。

強い炎症を起こしている肌は保湿ケアだけではなかなか改善されず、ステロイド薬でしっかりと治療しないと何度も症状がぶり返すばかりで一向によくなりません。

つまり、アトピー性皮膚炎の炎症にはそれに特化した治療が必要!

こうした違いを理解して、早期の対策を進めます。

ステロイド薬との付き合い方

最適なステロイド薬を選択しても「副作用が怖いから」という理由で指示された量より少なめに薄く伸ばして塗るなど、正しい使い方をしなかったら、激しい炎(炎症)はやっぱりおさまることはありません。

さらに、火が弱まってきたからもういいか・・・と消火活動をやめてしまったら、潜在的にくすぶっている火種が再燃する可能性がありますよね。

アトピー性皮膚炎も、中途半端に治療を中断してしまうと、潜在的にくすぶっている炎症の火種が再燃することがあります。

そうなるとまたストロイドに頼らなければならなくなり、結局治療が長引きます。

内服のステロイド薬は副作用を考慮すべきですが、軟膏タイプのステロイド薬は正しく使用すれば怖い薬ではありません。

長期使用を避けるためにも、病院で処方されたお薬は、必要な量を必要な期間、きちんと使用することがなによりも大切です。

よくなってきたらひたすら保湿ケア!

一定期間の治療を経て、医師からステロイド中止指示が出たら、その後はひたすら乾燥を防ぐ保湿ケアに注力します。

バーベキューから山火事を引き起こさないよう、引火のトリガーになる環境要因(強風の日は避ける、その場を離れないなど)に気を配るのと同じように

アトピー性皮膚炎の再燃を誘発する環境要因(紫外線、花粉、ダニ、化学繊維、刺激の強い洗浄料など)に気を配りながら、毎日の保湿ケアを継続し、成長とともに肌のバリア機能が強くなっていく時期が来るのを根気強く待ちます。

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎を予防・改善するために

アトピー性皮膚炎の予防や改善にパパママにできることは何でしょうか。
具体的な方法をいくつかご紹介します。

お風呂で使う洗浄料と洗い方

低月齢の赤ちゃんでは、ベビーバスで沐浴する際に沐浴剤を使うことがありますが、炎症がある肌の場合には悪化することがあるので注意しましょう。

皮脂汚れ、お薬、汗などが肌に残っていると症状悪化の要因になります。そのため、肌を清潔に保つことを心がけます。

ただし、石鹸など洗浄料に含まれる添加物は肌への刺激となる可能性があるので、使用する洗浄料の種類を考慮しましょう。

洗浄力が強すぎて過剰に皮脂を取り除いてしまうものや、洗い上がりに乾燥が強いものは避け、刺激が少なく使用感のよいものを選んであげてください。

ガーゼなどで肌をこすることも刺激になるので、ママの柔らかな手で包み込むように洗ってあげることをおすすめします。

また、熱めのお湯は肌のかゆみを誘発します。肌バリア機能回復に適しているのは38℃〜40℃のぬるま湯。ぬるめのお湯でも余分な皮脂は除去できますよ。

わたしが開発した赤ちゃん向け洗浄料『ポメロ』も是非使ってみてください。自然素材でつくられているので、デリケートな赤ちゃんの肌を優しく洗い上げることができます。

洗浄料は赤ちゃんの肌に毎日使うものだからこそ、こだわって選んであげてほしいと思います。

保湿ケアは必須!

アトピー性皮膚炎の肌は、バリア機能が低下し、角質層内の水分が極端に減って乾燥しています。

このような肌は刺激によるかゆみを生じやすく、さまざまなアレルギー物質の体内への侵入を容易にし、炎症を起こしやすい状態です。

お風呂上がりは急速に肌から水分が蒸発拡散、乾燥していくので、なるべく早く、しっかりと全身保湿を行いましょう。保湿ケアを行うことで、低下している肌の水分量を改善し、肌バリアを回復、維持させます。

肌が整えば、アレルギー物質の侵入と炎症の再燃を予防することができ、かゆみも抑えられます。

生まれた日から保湿料にもこだわって

保湿ケアの際、使用する保湿料にもこだわってあげましょう。

肌に直接つけるものだから、なるべく刺激の少ないものを選ぶことをおすすめします。

わたしが2年かけてプロデュースした、赤ちゃん向け保湿料『マシュマロ』は、赤ちゃんに安心してお使いいただけるよう、無添加にこだわりました。

ミネラル成分豊富な沖縄の海洋深層水がベースで、乾燥した赤ちゃんの肌に、栄養たっぷりの水分がぐんぐん浸透していきます。

赤ちゃんの大切な肌のことを真剣に考えたい方にこそ、試してもらえたらと思います。

アトピー性皮膚炎に移行する前段階の乳児湿疹の発症を予防、悪化させないために大事なのは、とにかく保湿です。

そしてアトピー性皮膚炎になってしまった場合にも、やっぱり保湿は基本中の基本のケアです!

生まれたその日から、丁寧な保湿ケアを継続することで赤ちゃんの肌を守ってあげましょう。

ほこり、ダニ、花粉、ペットに注意

室内のほこりやダニはアトピー性皮膚炎の症状を悪化させるリスク因子になります。

布団に掃除機をかける、抗ダニシーツを敷く、ぬいぐるみなどを置かない、フローリング生活にする、ペットは寝室に入れない、こまめにカーテンやクッションの洗濯をする、外出先から帰宅したら衣類の花粉を落とすなど

アトピー性皮膚炎の環境要因を無理のない範囲で除去する生活を心がけましょう。

離乳食の進め方

特定の食物によるアトピー性皮膚炎の悪化が確認されている場合を除き、「一般的にアレルギーになりやすい食材だから」という理由で特定食物を制限することはアトピー性皮膚炎の治療のために有効ではありません。

摂取開始を遅らせることなども自己判断では行わず、医師のアドバイスを仰ぎましょう。

赤ちゃんの肌をつくっているのはタンパク質です。ですので、むしろタンパク質の食材を離乳食初期から積極的に取り入れて、刺激を跳ね返す強い肌バリアを優先してつくってしまおう!の方針を勧められる場合もあります。

汗対策、衣服の選び方

赤ちゃんの肌には綿などの通気性、吸湿性の良い素材がおすすめです。肌にこすれることのないやわらかな素材を選びましょう。

肌表面に残る余分な汗と高温多湿環境は、アトピー性皮膚炎の症状を悪化させます。汗をかいたらこすらないよう押さえ拭きし、清潔な状態を保ちます。

シャワーで流すのもいいですが、あまり頻繁に洗い流すと必要な皮脂まで取り除いて乾燥を助長させることがあるため、拭き取る程度で十分です!

ステロイド薬の使用は医師の指示を守って

先述したように、アトピー性皮膚炎では、炎症が軽快して一見正常に見える肌も、実は密かに炎症が残っていて再燃しやすい状態である場合があります。

バーベキューを楽しんだ後の火は速やかに、かつ確実に消火させますよね。同じように、肌の炎症やかゆみも速やかに、かつ確実に鎮静させましょう!

見た目にキレイになったからと自己判断でお薬をやめてしまうことがないよう、炎症の再燃を予防するために医師の指示に従って、正しい用法と用量を守りましょう。

まとめ

赤ちゃんのアトピー性皮膚炎は、肌バリアの機能低下が起因となってアレルギー性の炎症を引き起こし、それらを掻きつぶすことで悪化、慢性化していく、ちょっとタチの悪い乳児湿疹の一種です。

他の乳児湿疹とは違い、反復して症状が出ることが特徴。複数の要素が絡み合って発症するので、軽度の乳児湿疹の時点で適切な対策を開始することが、アトピー性皮膚炎の発症予防のためになによりも大切です。

アトピー性皮膚炎は、すぐには治りませんが、適切な治療とこまめな保湿ケアによって、成長とともに改善していくケースも多いです。

ママが正しい知識を持って保湿ケアをがんばっても、体質などが大きく関わるため、発症を避けられないこともあります。ですからどうか、ママはご自分を責めないでくださいね。

基本の肌ケアは、とにかく保湿です。赤ちゃんの健やかな成長を信じて、適切な肌ケアを根気よく続けていきましょうね!

以上、赤ちゃんの乳児湿疹とアトピー性皮膚炎の違い、見分け方や対策をバーベキューに例えながらお話させていただきました。

解説しているうちに無性にバーベキューに行きたくなってきた・・・肉食系助産師HISAKOでした!

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助産師HISAKO

執筆:助産院ばぶばぶ 院長 助産師HISAKO

1974年生まれ。
総合病院産科、クリニック勤務を経て2006年大阪市阿倍野に「助産院ばぶばぶ」開設。母乳育児支援・育児相談を中心に、自治体育児支援訪問・妊婦教室を15年間にわたり担当。パパママ向け講演、専門職向けセミナー、教育現場では性教育等の出張授業を展開。

2020年沖縄県うるま市に助産院移転を機に『【12人産んだ】助産師HISAKOの子育てチャンネル』配信開始。妊娠出産育児を科学的根拠に基づき解説、自らの経験から得た学びを元に肩の力が抜ける子育ての考え方のヒントを提案、2023年YouTube登録者50万人以上に。

書籍、雑誌等の執筆活動、テレビラジオ等メディアにも多数出演。

また助産師とママ両面の視点から母子の健康と笑顔に直結する良質の保湿料をはじめ、こだわり商品の開発、製造販売を展開。

プライベートでは1998年から2020年の間に12人を出産。子だくさん助産師として認知されている。

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