夜中、搾乳しようよ・・・
現在わたしは
沖縄県でも高度な周産期医療を誇る大病院の
4人部屋に入院しています。
周産期センターには
さまざまなハイリスク妊婦、
トラブルが起きた妊婦さんたちが搬送されてきて
そのたびに、
ママと赤ちゃんが無事でありますように・・・
気になって気になって
仕方ありません。(職業病ですねー)
今朝、向かいのベッドの妊婦さんが
帝王切開でした。
オペ室移動のときに思わずカーテンあけて
「がんばってきてねー!」
声かけちゃいました。^^;
大きな病院なので
NICU(新生児集中治療室)
GCU(一般病棟に移る前の回復治療室)
が、完備されていますが
どうやらお隣のベッドにおられる方は
帝王切開で出産され、
赤ちゃんはGCUに入っている模様。
「お熱がやっと下がった」
というお話が聞こえてきたので
赤ちゃんはおそらくなんらかの感染症に
かかっちゃったのだと思います。
ときどき部屋に助産師が来て
お隣のママに
「搾乳してる?」
と聞くんだけど、
「まだ張ってないから」と。
どうやら、
ほとんど搾乳してないみたいなんですよね・・・。
「張ってなくても赤ちゃんのために
がんばって搾乳してほしい」
とお願いする助産師。
どうして
張ってないおっぱいを
せっせと刺激しないといけないのか。
そのメカニズム、意味を
ちゃんと説明しないと伝わらんよ!
カーテン越しに
モヤっとするわたし。(笑)
結局、彼女は
昨晩も一度も起きず、
ずっと寝てたみたいです・・・(T . T)
赤ちゃんが低出生体重児だったり、
出産時に問題があってNICU、GCUに入っている場合、
母子分離されて授乳ができないことがあります。
赤ちゃんと離れている間
ママがすべきこと。
赤ちゃんが哺乳可能になり、
ママと一緒に過ごせるようになり次第、
すぐに直母を始められるよう
母乳の分泌を増やし、
待機するためには
たとえおっぱいがまだ張っていなくても
赤ちゃんに授乳するのと同じぐらい頻繁に
乳頭を刺激しなくちゃいけません。
「搾乳しても出ないから無意味でしょ」
ではなくて、
それ相当の刺激を頻繁に与えることで
母乳生産のスイッチが入り、
どんどん分泌量が増していくのです。
赤ちゃんが哺乳、もしくは搾乳すると
その刺激がママの脳に伝わります。
すると、母乳を生成するホルモン、
プロラクチンの血中濃度が上昇、
母乳の分泌が促されます。
産後週数間は、
乳頭を刺激すればするほど
プロラクチンの分泌量は増えていきます。
プロラクチンが増えれば増えるほど
母乳の生産量も増えます。
なので、
直母であれ搾乳であれ
『乳頭への刺激があるほど母乳の量が増える』
それぞれの赤ちゃんにとって
オリジナルオーダーメイドの
母乳量を生産できるようになるために
とても合理的なこの仕組みをうまく利用することが
母乳分泌が安定していく過程では
とても大事なんです。
産後数週間までが勝負期間なんです!
日数が経てば経つほど、
プロラクチンの分泌量と母乳の生産量の
関係性は薄れていってしまうので、
出産してしばらくのママのがんばりが、
功を奏するのです。
もちろん、隣のママが
母乳育児に興味がないよ~ということなら
それはそれでいいんです。
価値観はいろいろだし、尊重されるべきでしょう。
だけど、
帝王切開で産道を通らず生まれたゆえに
ママ由来の細菌叢の移行の機会を
得ることができなかったからこそ、
赤ちゃんがGCUにいるからこそ
感染症になっちゃったからこそ
少なくとも出生後数週間は
初乳に含まれる免疫物質を
しっかり赤ちゃんの体内に入れてあげたいと
助産師の立場からは思います・・・。
「3時間おきに授乳しましょう」
「母乳をたくさん出すには授乳間隔をあけましょう」
「夜間授乳はとばして睡眠の確保を」
こんなことしてしたら
おっぱいはどうなってしまうのか。
母乳の中には、プロラクチンとは逆に
「母乳を作りすぎているみたいだから
これ以上分泌しないでね」
と、制御方向に働く物質も含まれているので
母乳が乳房の中に残ったままになると
これ以上母乳が分泌されないように
母乳分泌を止める仕組みが
作動してしまいます。
母乳制御システムは、
乳房に母乳がたまりすぎて
乳腺炎などのトラブルを起こさないよう
母体を守るための
防御的な仕組みともいえるので
これもまた、わたしたちの体には
必要なことなのでしょうね。
つまり、
授乳(搾乳)の間隔をあければあけるほど
母乳の生産量は減るのです。
赤ちゃんがGCUにいるからこそ
せっせと搾乳することで
乳房の中を空っぽにし続けることが必須なんだよ!
って。
カーテンの向こうにいるママに
伝えたいけど、伝えられない・・・
余計なお世話だね。
あああ~~~~
悶々します・・・( ̄◇ ̄;)