帝王切開後の早期離床、産後の血栓症
妊娠中は
足や足の付け根、骨盤内の血管の中で
血液のかたまり(血栓)ができ
血液の流れを止めてしまうリスクが高まります。
妊婦に血栓症が起きやすい理由は
以下です。
●おなかの赤ちゃんに
たくさんの栄養を供給するため、
妊娠後期になると
母体の血液量が非妊娠時の1、4倍に増えること
●出産時の出血を見込んで
母体を守るために、すぐさま止血できるよう
血液が固まりやすくなること
●おなかが大きくなって
骨盤内から下半身の静脈が圧迫され
血流が悪くなること
●妊娠中はエストロゲンという
女性ホルモンの分泌量も増え、
これにも血液を固める作用があること
また、妊娠中に引き続き産後も
母乳育児をすると
毎日すごい量の水分が母体から出ていくし、
赤ちゃんのお世話に必死になりすぎて
つい自分の水分補給を
おろそかにしてしまい、
産後のママは隠れ脱水になりやすく、
血液が濃くなると
さらに血栓ができやすくなるので
産後2ヶ月ぐらいまでは
しっかり水分をとって生活するなど
意識が必要です。
帝王切開では、
手術前夜から絶飲食になることや
手術が骨盤内の操作であること、
術後はなかなかベッドから起き上がれず
横になったままの時間が多くなるため
経膣分娩より10倍も血栓症になる
リスクが高まると言われています。
術後じっとしていることで
足にできた血栓が
その場に留まったままになっていて
なんらかの拍子に
その血栓が急に血流に乗って
肺動脈まで運ばれ、そこで詰まると
生命の危機にかかわる
『肺塞栓症』になります。
昔、助産師1年目のときに
まさにこの、足にできた血栓が肺に飛ぶという、
おっそろしい肺静脈塞栓症に
出くわしてしまったことがあります。
帝王切開後のママでしたが
立ち上がろうとするとフラフラで
めまいがして座り込んでしまう感じだったので
とりあえず車椅子で
短時間の赤ちゃん面会から
離床を始めてみましょう、
と、ベッドのリクライニングの頭側を
上げたんです。
そしたら彼女の様子がみるみる
おかしくなって・・・
顔面蒼白、
冷や汗をかいて
胸をおさえていきなりの呼吸困難!
姿勢を急に変えたことで
足、もしくは骨盤内静脈にできた血栓が
一気に肺に運ばれて詰まったんです!
それは、血の気が引く光景でした・・・。
当時はまだ
今のように病棟スタッフ全員が
医療用のピッチなどを携帯するなんて
システムはなかったので
わたしは詰所まで全速疾走!!(元陸上部)
急変〜〜〜!
誰か来てー!
って助けを求めました。
たくさん医師が集まってきて
すぐに応急処置を施し、
緊迫した状態のまま
オペ室に運ばれていく患者さんを
わたしはただボーッと
見送ることしかできませんでした。
そんなわけで
帝王切開術前には
弾性ソックスを履かされ、
術後すぐからは
間欠的空気圧迫法(フットポンプ)を開始
血栓を予防します。
だけど、
わたしが新人のときに経験したように
ポンプによる外側からのリスミカルなマッサージ
だけでは不足なので
術後12〜24時間ぐらい経過したら
さぁ立ち上がるよ!
さぁ歩くよ!
傷口は痛いし、フラフラで
「鬼ー!」って思うかもしれないけど
足に重力をかけて
しっかりふくらはぎの静脈ポンプを動かすことで
下半身の血流が動き出し
血栓予防になるんです。
だから、鬼って言われても
スパルタ早期離床はやっぱり大事。
産婦人科診療ガイドラインには
『術後24時間以内に離床』
と書いてあります。
わたしは3日前に
帝王切開で出産しました。
2000cc以上出血したのに
なんと術後6時間で
「さぁ立つよー!」
助産師さんが
早期離床を促しに来ました。
え。ウソやろ。
まだ6時間やで・・・( ̄◇ ̄;)
なんでも、
それがこの病院の方針なんだとか。
帝王切開後6時間で早期離床って
沖縄、いろいろゆるいはずやのに、
めっちゃスパルタですやん!(笑)
わたしが知るかぎり、
経膣分娩後は産後2時間、
帝王切開後は、
術後12時間ぐらいで
初回歩行の産院が
多いんじゃないかな。
それでも、立てというなら
立つともさ!
わたしに不可能という文字はないで。
・・・と宣言してみたものの、
帝王切開後の褥婦のいったい何割が
術後6時間でスムーズに
歩けるんかなぁとチラっと思ったり。(^◇^;)
体育会系なので
気合で立ち上がり、
歩行器におばあちゃんみたいに
しなだれがかってヨレヨレになりながら
深呼吸しながら意地で歩いて新生児室の赤ちゃん
見に行きましたが
案の定、部屋に戻ろうとして
椅子から立ち上がった瞬間、
目の前がグアングアン回り出して
周囲の音がスィーーっと遠のいていきました。
あかん・・・倒れる・・・
血圧低下80−40
そのまま新生児でしばらく横になって
敗北者(何に対して?)
車椅子で帰室。
そりゃそうやろ、
大出血後の6時間後早期離床やもん。
帝王切開やったし、貧血やし、
硬膜外麻酔、まだ背中に入ってるし、
倒れる要素ぜんぶ揃ってるやん?
術後2日目まで
背中に硬膜外麻酔のカテーテルが留置されています。
痛み止めを兼ねて。
硬膜外麻酔の入っている場所の近くには
血管の緊張を調節しながら
血圧をコントロールする神経があるので
これが留置されていると
立ち上がった途端に
血圧がシューンと下がり(起立性低血圧)
グラ・・・
低血圧とともに頻脈になって
その場に座り込む
ということが珍しくないんですよね。
下手すりゃ、バーン!と
倒れますからね。
子どもの頃に
朝礼中に目の前が真っ暗になって
よく倒れてた人は体質的に
起立性低血圧になりやすいので
帝王切開後の産後の早期離床では
グラ・・・となる可能性大だぞと
自覚しておいてくださいね~。
(それでも血栓予防のために動かなあかんねん!)
ちなみに外国では
帝王切開でも48時間で退院したりします。
ありえへん・・・
すごいよな〜。
以前、黒人産婦さんの
帝王切開術後ケアしたことあるけど、
めっちゃ強くて初回離床からスタスタ歩く姿に
おったまげたのを覚えています、
骨盤や、靭帯や
いろいろ身体の作りがそもそも
根本的に日本人とは違うんやろな~。
悔しいけど
いくら体育会系でも
日本人には絶対真似できひんです。
産後3日目。
歩いてももう倒れそうになることはないですが、
傷が痛くてまともに歩けません。
腰の曲がったおばあちゃんみたいで
トホホです・・・。
帝王切開ってこんなんなるんやな。
正直、キツすぎです!