『優しさ』『大切』ってなんだろう
看護系大学の2年生。
20歳の彼女は、
5歳年上の優しい彼と同棲していました。
幸せな日々。そして妊娠。
2人は何度も話し合いました。
彼女は産みたかったのですが、
今はまだ2人とも赤ちゃんを迎え入れる
責任を果たせない、という結論にいたり、
妊娠継続をあきらめることを選択をしました。
1年後の赤ちゃんの命日には
2人で一緒にケーキを食べようね、と
約束していたそうです。
ある日、学校で先生に
「助産師になりたい」と話したところ
「大丈夫なの?
あのことはもう乗り越えられているの?
それができてなければ助産師なんて無理よ」
・・・ショックだったそうです。
彼女は立ち直ったつもりでいました。
でも、おなかの赤ちゃんをお空に帰して
月日が経つごとに
気持ちが不安定になることが増えていきました。
いつしか学校に通えなくなりました。
食事が喉を通らなくなりました。
死んでしまいたいと考えるようになりました。
診断名は
感情障害
うつ病
学校は、現在休学しています。
彼はそんな彼女を支えてくれていましたが、
中絶からちょうど1年・・・
「もう無理。一緒にいられない」
別れを切り出してきたそうです。
彼女は別れたくないと気持ちを伝えましたが、
彼の心は変わることはありませんでした。
中絶経験で生じた罪悪感、心の傷・・・
そのまま心の病気にかかってしまった
面倒な自分と一緒にいたら
しんどくなるのは当然だと思うし、
彼の決断を自分には引き止める権利もない・・・
と彼女は泣きながら話してくれました。
彼女は
「自分のところに来てくれた命に申し訳ない
自分が許せない、幸せに生きていいのか」
っていうけど、
『人生において必要な選択だった』と
受け止められる女性であってほしいです。
やむを得ない事情があるとき、
おなかの子を愛しているからこそ
産まない決断をする、ということもあるのです。
置かれた状況において、最善の決断。
それは大人としての責任ある行動です。
わたしは彼女の勇気を讃えたい!
だって、本当に困難な決断をしたのだから。
世間の声のなかに
「産めないならセックスするな」
というような意見もあると思います。
でも、産む準備ができるまで
セックスしないのがいいのか
というと、絶対そうじゃないと思うんですよ。
生きている限り、人間同士が関係を持っていくときに
性行為にいたるのはごく自然なことだと
思うのです。
避妊だって100%ではありません。
とても辛いことがあったとき。
すごく落ち込んでいるとき。
わたしたちはデリケートな心を持って
みんな一生懸命に生きているので
いつも、どんなときも冷静に、
きちんと避妊行動ができるわけではないですよね。
学校の先生は、
彼女が助産師になることは無理
だとおっしゃいましたが
わたしは、
中絶したことから立ち直る、とか
乗り越える、ということは考える必要もないと思います。
彼女だからこそ
助産師になってほしいと思いました。
素敵な助産師になれると思います。
それぞれ異なる背景の中、
望まない妊娠、中絶、
わたしたち女性の人生には
いろんなことが起こります。
それを理解し、寄り添い、温かく包み込み、
励まし、支えることができるのは
悲しく辛い経験を含めて
そんな自分を受け入れていくことができるようになった
少し未来の彼女だと思うから。
その悲しみが無意味なものにならないように、
糧になる、意味ある悲しみに変わるように・・・
夢を叶えてほしいと思います。
彼については
去るもの追わず、です。
本当の『優しさ』とはなんでしょうね。
彼女のいう、優しい彼 とは
どんな人物像なのでしょうか。
冷たいようですが、
所詮、2人の間柄は
その程度でしかなかったのです。
妊娠というできごとが、彼との関係性を
改めて見つめ直すきっかけを作ってくれたのでしょうし、
彼女を強くたくましく、
そして自立し凛とした大人の女性へと導いてくれる
道しるべを示してくれたのは間違いないと思います。
別れを切り出した彼は、彼女のことを
「好きじゃないけど大切」と言ったそうです。
好きじゃないけど大切って、
どういう意味でしょうか。
2年間一緒に過ごしてきて、
おなかに赤ちゃんが来てくれて、
そのことで彼女の心が崩れてしまって、
彼は男として責任を感じているから「大切」
ということなのでしょうか?
なんか・・・
すごく残酷でズルい言い方だと思いました。
自分の弱さを隠す、自分の残酷さをごまかす
自分を正当化するための表現としか
わたしには感じられませんでした。
彼女は今も彼のことが好きで、
彼もそれを知ってるはず。
なのに、そんなこと言ったら
彼女をさらに苦しめることぐらい想像できるでしょうに。
『優しさ』とは。
『大切』とは。
なんでしょうね・・・。
さらに、別れるとき、
「あなたは特別な人だから連絡先も、写真も
全部残しておくね」
「あなたの幸せを祈ってる。助産師になれるよ」
と彼は言ったそうです。
ほんとに彼女の幸せを祈っているのなら、
彼女に気を持たせるようなこと
言うなよ!!
ほんとに彼女の新しい門出を
応援する気持ちがあるのなら
連絡先も残しちゃダメだろ!!
彼のズルさ。
彼の弱さ。
揺れる彼女の想い・・・
ケーキを食べようという約束は
果たされることがありませんでした。
聞いてて本当に切ないです。
だけどきっと、
人生における大きなできごとは
彼女の糧となって、生きつづけるはずだと思います。
大切に想う異性と同等に
大切なこと、大切なものは他にもあります。
大失恋は辛いことだけど、
自暴自棄になってはいけません。
他の大切なことが見えなくなるような
つまらない人間に成り下がらないでほしい!
時間をかけて、
これからもたくさんの経験を積みながら
成熟した大人の女性に
彼女が成長していけますように・・・。