TOLAC/VBAC(帝王切開後の経膣分娩)
6ヶ月の女の子のママです。
夫とは子どもは2人か3人は欲しいよね、と話しています。
出産の際、回旋異常でなかなか赤ちゃんが下りて来ず、
陣痛促進剤も使ったのですがダメで
結局、緊急帝王切開になりました。
娘は何の異常もなく、
元気に生まれてきてくれたのですが
やはり、産んだ感覚というのがなく、
自分の赤ちゃんなのはよくわかっているのですが、
どうしても自然分娩を経験してみたい
という気持ちが強いです。
娘がまだ6ヶ月なので、
2人目を作るのはまだ先と考えているのですが
2人目を出産するときは、TOLACを受けたいと
思っています。
また、陣痛に耐えているとき
子宮口が2~3cmだったのですが
あまりに痛みが強く、叫びまくって痛みに耐えていたとこと
主治医の男の先生に
「先が思いやられる」と言われてしまいました。
痛くて痛くてたまらなかったのに
不思議なもので、その言葉が今でもずっと残っています。
いろんなことがあり、どうしても自然分娩を
あきらめきれません。
TOLACはとてもリスクが高いと聞きます。
ぜひ、TOLACについてのメリットやデメリットを
教えていただきたいです。
↑↑↑
現在、日本では20%ぐらいの赤ちゃんが
帝王切開で生まれています。
わたしも第12子で
人生初の帝王切開を経験しましたが
産後の辛さに度肝を抜かれました!
経膣分娩の100倍ぐらい
回復に時間がかかってしんどかった印象です。^^;
1回帝王切開してしまえば
次からはほぼ間違いなく帝王切開。
もう二度と、わたしの人生において
経膣分娩を経験することはできないんだな・・・
そんなふうに考えて
なんともいえない切ない気持ちになりました。
12人も産んでおいて
何ゆーとんねん!
って話ですけど笑
でもそれが、
理屈抜きの正直な気持ちだったんですよね。
帝王切開後の経膣分娩
チャレンジすることを、TOLAC
成功したら、VBAC
と、いいます。
要するに、
TOLACやってみて、成功したらVBACと呼びます。
なんで統一せんのやろ。
ややこしいですね・・・(⌒-⌒; )
2000年以前は多くの病院が
当たり前にTOLACをやっていました。
現在は高齢妊娠が増えたこともあってか
帝王切開率の上昇とともに、
全国的どこの病院でも帝王切開後の次のお産は
予定帝王切開が選択される施設がほとんどです。
その最大の理由は、子宮破裂のリスクです。
既往帝王切開によって
子宮の切開部が薄くなっていて
妊娠後期におなかが大きくなると
薄い部分がさらに薄くなり、
陣痛時に突然、何の前触れもなく
破れてしまう可能性があるんです。
子宮破裂は予測困難であることが、まず大きなリスクです。
十分注意していても、発症予防できないことが
多々あります。
ママの命、そして赤ちゃんの命。
すべてを無にしかねない
超緊急事態発生に備えて
高度救命救急レベルの大量輸血や子宮摘出などの
一刻を争う手術に切り替える体制を
24時間整えておくことは物理的にも簡単ではありません。
ダブルセットアップといって、
経膣分娩と並行して、すぐに帝王切開に
切り替えられるようにどちらも準備して
待たなければならないんです。
そのためには、
麻酔医、産婦人科医、新生児科医、
小児科医、助産師、看護師・・・
NICUの受け入れ体制など
多くのマンパワーをかき集めなければならず、
もしもTOLAC失敗になった場合の
15分以内のグレードA超緊急帝王切開は、
よほど大規模の周産期医療センターで
常にスタッフが常在し、チーム医療が確立された
施設でなければ叶わないでしょう。
TOLACでの子宮破裂は0、5%~1%と言われていて
この数字を高いとみるか低いとみるか・・・
それは人それぞれの感じ方だと思いますが、
100人~150人に1人が、
TOLACによって母体と赤ちゃんの命の危機に面する
という事実があることは頭に入れておかなければ
ならないと思います。
どんなに順調な妊娠経過でも、
何が起きるかわからないのがお産です。
助産院や、個人のクリニックで
大きなトラブルなく出産を繰り返していると
その大切なことを忘れかけていたように思います。
周産期医療センターに入院した第12子で
その事実を改めて
思い知ることになりました。
周産期医療従事者は日々、
秒単位で刻々と状況の変わる
出産の恐ろしさを知っているだけに
TOLACは安易に勧めることができないのだろうと思います。
TOLACの成功率は、
母体年齢、肥満度、経膣分娩歴、
前回帝王切開の理由などで変わります。
前回、子宮口が開かなかった、
などの場合は成功率は低下すると言われています。
TOLACの条件は以下。
1)既往帝王切開が1回である
2)前回帝王切開の子宮切開が横切開であること
3)胎児の頭がママの骨盤を通過できるサイズであること
4)今回の妊娠が双胎や逆子ではないこと
5)TOLACに対するリスクを理解していること
子宮破裂のリスクを少しでも軽減させるために
TOLACでは陣痛誘発、促進剤は使用できません。
41wを超えたときにも予定帝王切開に
切り替えます。
TOLACを希望する人に対して
ネットなどでは
「命をどう思ってるんだ!」
「危険があるってわかってて
エゴをつらぬく自分勝手さに呆れる」
医学知識のない外野が
ちょっと聞きかじった表面的な情報だけで
人の人生に口出しするのはどうかと思います。
当事者である妊婦さんと産科医が
慎重に慎重に方法を選んで
この施設、この妊娠経過なら、
できるかもしれない!
よしやってみよう!
と判断したのなら、
その希望を叶えるために
一丸となってチャレンジしてみることには
価値があると思うんです。
TOLACしたいというママには
わたしもよく出会います。
そして、無事にVBAC成功!
よかったね~!!という話にも
ときどき出会います。
彼女たちが命を軽視して、
ただのわがままで無責任に
下から産みたい~!って言ってるわけではない
ってことは、よく知ってます。
みんな理屈抜きに、
経膣分娩で産んでみたいんですよ。
自分で産んだ感覚を味わいたいんです。
それだって、立派な理由だと
わたしは思ってます。
帝王切開を繰り返せば3人までしか産めないけど、
TOLACなら子だくさんの夢が叶います。
帝王切開を繰り返せば癒着胎盤や前置胎盤の
リスクが上がるけど、
TOLACならリスクを軽減できます。
なによりママの達成感、満足感!
それは、その後の子育てへのモチベーションに
つながっていくことでしょう。
妊婦さんも、医師も助産師も
それぞれにみんないろんな考え方があって
みんな間違ってないと思います。
どんなお産にもリスクはあります。
だからこそ、過去の分娩経過や帝王切開の方法、理由、
そして今回の妊娠経過をしっかりと評価した上で、
妊婦さんとその家族、病院の思いが一致したときには
それ以外の意見に惑わされることなく
堂々とTOLACに踏み切ってもいいのかな、と
思います。