赤ちゃんの体重増加不良・・・助産院の対応にモヤモヤ(3)
WHO『子どもの成長の評価ガイドライン』では
1つだけの計測項目(体重)によらず、
少なくとも身長・体重・頭囲、それぞれの値の評価と
相互関係の評価、出生体重、出生週数、栄養法、
活発でよく動く子なのかおっとりした子なのか、
よく泣くのかあまり泣かないのか、赤ちゃんの状態(個性)など
赤ちゃんの発育は、
総合的にたくさんの情報から
評価されるべきだと指摘しています。
発育を評価する上で
体重は重要な指標のひとつです。
でも、体重は『数値』として表されるゆえに
かえって必要以上に重視されやすいという側面があります。
比較的短期間で発育曲線の右上がりカーブと反対に
右下がりカーブになることが
2回以上続くようなときは小児科受診をするべきです。
なんらかの対処をしなければならない体重増加不良は
100人中3~4人の赤ちゃんに認められます。
問題とされる体重増加不良(fall-ure to thrive)は
低出生体重児、なんらかの基礎疾患、不適切な授乳、
ネグレクトなどが考えられます。
適切な栄養摂取によって
体重は急激に増加に転じることも多く、
授乳方法や離乳食の状況の確認は当然、大切だと思います。
そして、ママの心のサポートは必須ですね。
一方で、明らかな異常がないにもかかわらず、
ゆっくりと体重が増える赤ちゃん(slow weight gain)は
決して珍しいことではありません。
健康なんだけど、ゆっくり大きくなる赤ちゃんと、
早急な医学的対処が必要な赤ちゃんを
見分けるにはどこに着目すればいいのでしょう。
赤ちゃんの活気、肌のハリの低下、おしっこうんちの状態、
授乳状況と、ママのおっぱいの状態を診て
総合的に判断することが望ましいと思います。
具体的には、
定期的な体重測定を軸として、
以下の項目に着目し、総合的に評価します。
(日本小児科学会雑誌115 健診における栄養評価・母乳育児支援より)
====医療介入が必要な体重増加不良(病的)===
・反応が乏しい
・ずっと泣いている
・筋緊張不良・肌のハリの低下
・おむつがあまり濡れない
・濃いおしっこ、うんちの回数、量が極端に少ない
・8回以下の授乳回数
・授乳時間が短い
・射乳反射がうまく出現しない
・体重は安定して増加せず減ることもある
・月齢相当の発達から遅れている
===単にゆっくり大きくなる子(健康)===
・覚醒して活気がある
・筋緊張良好
・肌にハリがある
・少なくとも1日に6回以上のおしっこ
・薄くサラサラしたおしっこ
・うんちは苦痛なく出て機嫌がよい
・授乳時間は15~20分
・射乳反射が良好に出現
・体重増加は着実にあるがゆっくり
・月齢相当の発達が認められる
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赤ちゃんの体重増加には
家族性や遺伝性の因子の関与も指摘されているので
両親、兄姉が赤ちゃん時代に
どのような体重の増え方をしていたか、
パパママの体型などを確認することも大切な情報です。
右下がりにはならないけど、
ほとんど増えずに平行に推移する場合
とくに母乳で育っている子の場合、
健康でゆっくり体重が増えていても
集団健診などでは画一的に
「標準値に比べて○g軽い!」
「1日に○gしか増えていない!」
→ミルクを足してください!
などと指導されることも少なくありません。
生後4ヶ月頃までの発育が急で、
その後ゆるやかになっていく『平凡型』
マラソンで初めの発育は平凡型より
さらに急で途中からパタリと止まり、
横ばいになるタイプ『立ち上がり型』
このタイプは、母乳やミルクの飲みがよく、
離乳食が始まる頃に成長が落ち着きます。
初めは緩やか、
途中から追い込みをかける『追いつき型』
このパターンが
「健康なのに体重が増えない赤ちゃん」に
相当するのかなと思います。
彼らは生まれてしばらくは
あまり飲む量が少なくちょっと不安になりますが、
離乳食を食べ始めてしばらくすると
びっくりするほどたくさん食べるようになります。
それで体重が一気に伸びる子もいれば、
食べるのに相変わらず増えない子も。
もう、まさしく個性ですよね〜。
このような赤ちゃんの発育の特徴を
指導者が知らないと
その月齢の標準体重に当てはめて
たったそれだけでとんでもない保健指導を行い
ママを不安のどん底に陥れることになってしまいますね・・・。
どうも体重ばかり見られて
身長や頭囲の評価が抜け落ちてしまっているように思います。
もちろん、すべてをふまえて
適切に評価できる支援者もたくさんいらっしゃるとは思うのですが、
身長と頭囲も、赤ちゃんの発育の評価ではとても重要です。
低栄養の影響は、体重→身長→頭囲の順で現れます。
元気にしていて、
身長、頭囲も問題なくてただ体重だけ伸びが悪い場合は、
しばらく様子をみていいと思います。
体重だけではなく、
身長の伸びが悪くなってきたら
対処を検討する必要があります。
頭囲の発育は中枢神経系の発育を反映します。
月齢相当の発達(首のすわり、寝返り、目の輝き、喃語の出現など)が
あるかどうかにも着目する必要があります。
「その子なりの発育」とは
発育曲線ではあるひとりの赤ちゃんが
どのように大きくなっていくかはわかりません。
ただし、たくさんの赤ちゃんのデータの平均を
グラフに示しているので
発育曲線のカーブ(角度)そのものは
それなりに発育の目安として信頼できるものだと考えます。
ですから、「○ヶ月」というある1点で
帯のどのあたりにいるかは気にしなくていいです。
数ヶ月単位で赤ちゃんの発育を記入していったときに
発育曲線のラインよりも大きくはずれて、
まったく横ばいのままとか体重が減ってくる曲線になったときには
注意深く観察する必要があるかもしれません。
帯からははずれているけれど、
発育曲線のカーブにそって身長も体重も頭囲も増えているのなら
それが「その子なりの発育」です!