「ななって何考えてるの?」クラスメイトの疑問(発達障害)
中学1年生なな。
発達障害(自閉症スペクトラム障害)を抱えています。
特別支援学級に在籍し、
1日の大半は支援級で過ごしています。
給食、掃除、帰りの会など
単発的に通常級の活動にも参加しますが
通常学級での適応は難しいため、
本人の足が向かわない日も多いようです。
ななの現在の行動特性は
こんな感じ。
↓↓
生活リズムは確立されていて
休みの日も早寝早起きぜったいに守ります。
日々のパターン化された行動に
こだわりがあるゆえなのですが
本当にきっちり守るので尊敬してしまいます!
新しいこと、慣れない人、場所に警戒心が強く
環境変化への適応がとても苦手です。
ストレスが大きくなると感覚過敏が強くなり
至るところにじんましんが出現し、
あちこちがかゆくなります。
そうなると
メガネ、靴、靴下、制服のリボン、髪ゴムなど
身につけているものが耐え難くなり
引きちぎったり、皮膚を剥ぐ、
髪の毛を抜くなどの
自傷が見られることもあります。
他者の気持ち、
意図を汲み取ることが困難なので
集団になじむのが極端に苦手です。
人と関わるときに常に警戒心があり
相手への不信感がMAXになったり
安全地帯に土足で踏み入られたりすると
自らを守るため、他害することがあります。
言われたことを場面に応じて
臨機応変に対応することが困難です。
他者の言動を
主観のみの偏った捉え方をするため
感情が爆発してしまうことが多々ありますが
小さなことなら自らその場から
別の場所へ移動することでクールダウン可能。
抽象概念が苦手です。
視覚でとらえることのできる指示は入りやすいですが
聴覚でとらえなければならない指示については
たくさんの情報を同時に入れられると
重要な部分に焦点をあてにくく
パニックになってしまいます。
そのため、安心リラックスできる場所で、
具体的な言葉でひとつひとつ丁寧に
伝えてもらうなどの配慮が必要。
それさえあればきちんと応じることができます。
↑↑
6年生の頃は、通常級で過ごす時間も長く
クラスメイトとはコニュニケーションの面で
しょっちゅうトラブルを起こしつつも、
なんとかやり過ごしていました。
クラスの友達は、
ななの理不尽な態度や言動によって
物を壊されたり、暴力をふるわれたり・・・
嫌な気持ちになったり、泣かされたりすることが
たびたびあって
母親として穴があったら入りたい事件が
後を断ちませんでした。
それぞれが、ななに対して
いろんな感情を持っていながらも
担任の先生が
「相手の立場で物事を考える」大切さを
事あるごとに子どもたちに
繰り返し伝え続けてくださったこともあり
「ななは今、こんな気持ちなんじゃないかな?」
「ななはきっと、これがイヤだったんだよ」
自分主体の捉え方ではなく
ななの気持ちになって、
優しく話しかけてきてくれたり
かばってくれたり、仲間に入れてくれました。
大きな器でクラスのメンバーとして
受け入れようとしてくれる
心優しい子たちの姿を
わたしはたくさん見てきました。
中学生になるとカリキュラム的に
どうしても、5教科優先になります。
小学生のときみたいに
じっくり道徳教育に時間をとるわけには
いかなくなります。
同時に、子たちも
成長発達してきます。
小学生のときは深く考えなかったことにも
思考を巡らすことができるようになってきます。
「ななって、いったい何考えてるんだろう?」
「ななって、どういう子なんだろう?」
「よくよく考えてみれば
ななだけ許されることがあるって不公平だよね!」
「いきなり怒るし怖い。苦手。」
「なんでこっちが我慢しなきゃいけないの?」
「嫌い。関わりたくない。」
13歳だからこその捉え方。
そこから湧き出してくる複雑な気持ちが
よくも悪くも浮き彫りになってきました。
いえ、当然だと思います。
ななの行動や態度は、
納得いかないことだらけのはずだから。
大人でも発達障害の理解はとても難しいのに
発展途上の中学1年生に
ハイレベルな理解を求めても
立ちはだかる壁は高い・・・。
いつしかななは、
通常学級の教室に入ることが大きなストレスに
なっていきました。
みんなの目線が怖い・・・
どうせ私が悪者だと思われてる・・・
だったら攻撃される前にこっちから攻撃してやる・・・!
楽しい場所の教室が
彼女にとっては極度の緊張を強いられる
異質な場所に成り果ててしまいました。
ななの気持ち。
そして他のみんなの気持ち。
どっちの心にも寄り添いたい。
先生たちもどうしたものかと
葛藤されていたと思います。
「お母さんがクラスの子たちに
ななさんのことを話してくださったら
彼らの捉え方も変わるかもしれない」
学校からの依頼を受け
中学1年生を対象に
ななについての授業をさせてもらいました。
生徒たちの表情、反応を見ながら
いつものごとく台本なしの
50分ぶっつけ本番トーク。
喋る仕事しててよかったです。
YouTuberでホントよかった。(笑)
たくさんの先生方が
見学に来てくださいました。
ななのこと、
そしてななだけに限ったことではなく
発達障害の特性理解について、
こんなに多くの先生たちが
関心を持っていただいてるんだというのがわかって
めっちゃ嬉しかったです!
事前にクラスメイトに
「ななのことで聞きたいことは?」
というアンケートをとりました。
そうだよな〜うんうん。
と納得の内容ばかりでした。
13歳に、いかにわかりやすく
疑問に答えていくか・・・
全員の質問に答えてあげたかったので
質疑応答資料を作って、
授業当日に子どもたちに配布しました。
ななと同じように
学校での友達とのコミュニケーションの部分で
生きづらさや困り感を抱えている
発達障害児は世の中にたくさんいます。
二時的障害としての、
うつや不安脅迫性障害、適応障害などの発症を
少しでも回避できるよう
不器用ながらも
笑顔で過ごせるよう
・・・それにはやはり、
周囲の理解は必須だと思います。
「うちの子の特性理解は願っているけど
大勢の生徒を前にして
HISAKOさんみたいに
機関銃トークなんてできないよ・・・」
というママたちが普通だと思います。
授業はできなくても、
お子さまが毎日関わる児童、生徒たちに
このような文章を通して
ママから見たわが子の特性を
説明するというのも
みんなが笑顔で学校生活を送るための
とても大きな前進につながる材料に
なりえると思うのです。
なのでもし!
わたしが今回
13歳たちに配った質疑応答資料が
なんらかのお役に立つのであればと思い、
ドド〜ンと中身を
公開したいと思います!
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===ななってどういう子なの?
みんなの疑問に答えます!===
1)教室にあまりいないのはなぜ?
教室で席に座って授業を受けること、
「めんどくさいな」と思っても
みんなは座っていられますね。
普通はちょっと努力したら
できるこんな簡単なことも
ななはものすごくがんばってもできません。
ザワザワした教室にいることは
例えば、日本語がまったく通じない学校で、
外国人と同じように授業を受けてテストも受けて
いい点数をとりなさい
と言われてるのと同じぐらい苦痛なことです。
2)給食当番、掃除当番をなぜしないの?
不平等だと思う。
みんながごく普通に声をかけてくれても
ななは「悪口を言われたかも」「みんなが私を嫌ってるかも」と
決めつけて感じてしまう脳の障害があります。
だから、みんなとたくさん関わる
給食当番や掃除当番に参加したときに
もし「やり方が違う」「ちゃんとやって」など
文句を言われて、またイライラして怒ってしまったらどうしよう・・
と必要以上に心配、緊張してしまいます。
当番はしなくちゃいけないってことは、
ななもわかっています。
でも、傷つくのがこわい・・・
こわくてたまらない。
だったら最初から当番をやらなければ
友達に何か言われて傷つくこともない。
と考えてしまいます。
みんながななを仲間外れにする気がなかったとしても、
「友達が自分を嫌ってるにちがいない」と
感じてしまうななが、
みんなと一緒に当番をするって
ものすごくストレスがかかることだと思いませんか?
脳に障害がなければ
当番をしないのは不平等だけど、
ななの脳はみんなの脳とは違うんだということを
わかってほしいです。
例えば車椅子の人に
「どうして体育をしないの?不平等だ!」
って思いますか?
足が悪い人はどんなにがんばっても
みんなと一緒に体育はできませんね。
ななの障害は車椅子の人みたいに
わかりやすい障害ではないから
なかなか理解してもらえないかもしれません。
でも、
どんなにがんばってもできないことがあります。
なぜなら脳に障害があるから。
障害には、
わかりやすい障害、わかりにくい障害があります。
周りから見てわかりやすい障害を持っている人は
「できなくてもいいよ」って言ってもらえる。
でも周りから見てわかりにく障害を持っている人は
できないことがあったときに
「不公平」とか「甘えてる」と
言われてしまうことがあります。
それは、とても悲しく苦しいです。
好きで障害を持って生まれてきたわけじゃないから・・・。
ななみたいな『わかりにくい障害』を持っている人に対して
どうか温かい気持ちで見守ってくれたらうれしいです。
3)ななさんが怒ってるときどう接したらいいの?
怒ってるときに声をかけられたり、
じっと見つめられたりすると
「文句言われてる!」「悪口言われてる!」
「軽べつの目で見てる!」
と感じる気持ちが大きくふくらんで
パニックになってしまいます。
なので、ななが怒ってるなと思ったら、
できればごく普通に、声もかけず
いつもどおりにそっとしておいてくれたら嬉しいです。
ななは1人で外に出たり廊下を歩き回ったりしながら
必死で気持ちを落ち着けようとがんばります。
暴力ふるわれる!危険だ!
と思ったときは
・近くの先生を呼んでください
・走ってその場を離れてください
(けがしないように逃げてね!)
4)何をしていつ怒るかわからないからこわい
「え?そんなことで?」ということで
いきなり怒るので、意味がわかりませんね。
普通の脳の人にとっては
ごく普通の会話でも、
ななの脳では「けんかを売られた!」
と感じてしまったりする場合があります。
みんなも友達や先生に
「ダメだよ」って否定されたら
〝ちょっと〟悲しい気持ちになりますよね。
みんなが〝ちょっと〟のところ、
ななは脳の障害のために
〝世界の終わりぐらい〟
悲しくて悔しい気持ちになってしまいます。
怒ってばかりで一番しんどくつらい思いをしているのは
なな本人だと思います。
自閉症だから怒ってしまう。
自閉症だからしかたがない。
がんばって、
努力すれば治るわけではない、
生まれつきの脳の障害をかかえて、
ななは一生懸命生きています。
「怒らせたらどうしよう・・・(怖)」
ではなく、
「あら~怒らせちゃったー(笑)」
ぐらいの気持ちで声をかけてあげてください。
5)給食と帰りの会だけ来て支援級では何をしてるの?
ななは勉強に関しても
「わからない問題」「難しい問題」が出てきたときに
大きなストレスを感じます。
みんなは、難しかったら飛ばしちゃおう、とか、
わからなくても、まぁいいか~とか、
ストレスを上手に受け止めて、
前向きに切り替えたりする力がありますね。
でもななの脳は
「まぁいいか」の切り替えができません。
『わからない!→もう嫌→ここにはいられない→無理、助けて!』
になってしまいます。
支援級では、なながなるべくストレスを感じないようにと、
小学生レベルに落として
ちょっと考えたら簡単にわかる勉強をしています。
耳で聴いたことを
頭の中でうまく整理することができず
イライラするけど
目で見たものは整理しやすく
落ち着いて取り組めるという特性もあるので
タブレットを使って勉強しています。
また、5教科以外に、
支援級の仲間たちといろんな話をしながら、
少しでもイライラせずに
上手に人との関われるように・・・
という勉強もしています。
6)イライラしてるときになぜ
人に八つ当たりして人の物を投げるの?
怒った時、なんでそんなに物の扱い方が荒いの?
みんなもイライラしているときに家の人や兄弟に
八つ当たりしてしまうこと、ないですか?
暑い、蚊がいる、そんな小さなことでも
ななの脳はがまんができず大きなストレスを感じます。
普通の人なら、その程度のストレスなら
自分でなんとか気持ちをおさえこむことができるけど
ななはがんばってもうまくそれができません。
「私に近づかないで!私に関わらないで!
だってこれ以上傷ついたら壊れちゃうから!」
そんな気持ちが人に暴力をふるったり
物を投げたりする行動に表れてしまいます。
でも本当は、
みんなと仲良くしたいと思っています。
みんなに話しかけてきてほしいって
家でいつも話しています。
だけど、上手に友達と会話したり
冗談を言い合って笑ったりができないから
通常級にいるのがつらいんだ・・・と言ってます。
苦手なことをしろって言われると
誰でもとても緊張しますよね。
自分の発言で、
友達が嫌な気持ちになるんじゃないか?
なんで自分だけ、
上手に友達と関われないんだろう・・・
ななは苦しんでいます。
みんなと仲良くしたいのに、
がんばってもがんばってもできない・・・
みんなが当たり前にできることも、
ななにとっては大学生の勉強をするぐらい
難しいことです。
ななの行動や態度で、
通常級のみんながどんどん離れていってしまうことが悲しいと
悩んでいます。
7)なんで怒ったらずっと「死ね死ね」唱えるの?
「死ね」「消えろ」という言葉の裏にある本当の気持ちは、
「巨大なストレスがかかって死んでしまいそう!
「しんどいよ。辛いよ。助けて!」
というななの心の叫びです。
8)なんで怒ったら給食投げたり机寄せしなかったりするの?
給食で嫌いなものを減らしていいのに減らさず最後まで持ってて
捨てるのはなぜ?
自分の気持ちを言葉で相手に伝えるのがとても苦手です。
「嫌いだから減らそう」
みんなは当たり前にできることも
ななの脳の中では、
「嫌い→どうしよう→イライラ→だめだ爆発!」
「嫌いだから減らす」をすればいいだけでしょ、
簡単じゃん。と思うかもしれないけど
みんなにとってこんなに簡単なことが、
ななにはすごく難しいことなんです。
最後まで嫌いなものを持ったままにするのは、
必死で「ストレスに耐えよう、負けないぞ」と
戦っているから。
でも結局、我慢しきれなくてイライラが爆発してしまい、
給食を投げ捨てるという行動に出てしまいます。
(片付けてくれてるみなさん、ありがとう)
9)なんで靴下を履かないで裸足なの?(危ない)
ななには『感覚過敏』という特性があります。
イライラしたときにメガネ、靴、靴下、ネクタイなど
身につけているものが肌に触れているのが気持ち悪くて
全部外したい気分になり、
がまんできなくなります。
例えば、服の中で
たくさんの虫がうごめいていて、
気持ち悪くてパニックになる感じかな。
足をけがしようと、メガネが壊れようと、
そんなこと考えるゆとりもないぐらい
今すぐ全部外したい!
そうなったらもう止められません。
10)なんで怒ってるときに理由を言わないのか
言ってくれたら何に怒ってるかわかるかもしれないのに。
言いたいけどうまく言えない・・・
伝わらなかったらどうしよう・・・
どうせ伝わらないよね・・・
伝わらなかったらまた
自分は爆発してしまうかもしれない・・
そう思って、黙ってしまいます。
怒りすぎているときは
冷静さを見失っています。
怒りが最大級になっているときは本人も、
もう何に怒っていたのかわからない状態に
なってしまいます。
言葉で怒っている理由を話すことは、
自分におそいかかっている
巨大なストレスに向き合うことになります。
そんなことしたら
自分が壊れてしまうんじゃないか・・・
だから、自分を守るために
理由を言わずに黙ってその場から
飛び出してしまいます。
11)プール入れなかっただけで怒るの?
(自分が来なかっただけなのに)
みんなにとっては「プールぐらいのことで?」ですね。
でも、みんなが「プール楽しかったね~」
と話している姿を見たとき
「来なかった人には関係ない話だけどね!」
と仲間外れにされているように
ななは感じてしまいました。
みんなそんなつもりはまったくなかったはずだけど
「自分だけのけ者にされた!」
とゆがんだとらえ方をしてしまう・・・
それがななの脳の障害なんです。
12)なぜ大阪からわざわざ沖縄に来たの?
大阪の人たちは
自分の意見をズバっとはっきり言います。
しかも早口の大阪弁なので、
とてもキツく聞こえます。
大阪は人口も沖縄よりずっと多いです。
大阪の騒がしくて
自己主張の激しい人に囲まれた環境で
自閉症のななが暮らしていくのはしんどいだろうな・・・
と思って沖縄に来ました。
○○中学校は少人数で、
大阪に比べるとみんな穏やかで優しいです。
6年生で引っ越してきてからずっとななは
「大阪の友達より沖縄の友達は優しくて好き」
と言ってます。
☆番外編☆
こんな問題だらけのななをほめてくれた人がいました!
ありがとう!
○笑顔のすてきなななさん!
なぜ教室に来ないの?
一緒に勉強しましょう!
○優しいところ、人の悪口を言わないところが
ななさんのいいところ!
わたしが授業をしたあと、
あるクラスの子が
学校帰りに家に遊びに来てくれました。
今までななが友達を連れてくることなんてなかったし、
友達の方から遊びに来てくれるなんてことも
皆無でした。
何か響いたんだ・・・!
わたしがこうやって、学校に出向いて
みんなの前でななのことを伝えたり、
文章にしてななの特性やお願い事を伝えたことで
クラスメイトの心になんらかの
温かいものが芽生えたんだなと
嬉しくなりました。
ななも嬉しそうでした。
だって、友達が来てくれたんですよ!!!
それって快挙ですよ!!!
しばらくそっと観察していましたが、
とても楽しそうに会話が弾んでいました。
母のわたしまで
ほっこり温かい気持ちになりました♪