妊娠中の水疱瘡
私は21歳のときに妊娠がわかり、
当時付き合っていた今の旦那さんと結婚しました。
いわゆる『授かり婚』です。
社会人2年目、世間ではまだまだ遊び盛り!
な私を選んでくれた娘の存在に
最初はびっくりしたものの、
とてもとても嬉しかったのを憶えています。
狭い6畳の部屋で旦那さんとの生活をスタート。
つわりと格闘しながら
これから生まれてくる娘のために
仕事に行く日々。
旦那さんは献身的にサポートしてくれて
大変ながらも〝母〟そして〝家族〟に
なる喜びでいっぱいでした。
妊娠10wの頃、いつものように身支度していると
耳たぶの裏に小さな水泡ができていることに気づき、
蚊にでも刺されたかなぁ・・・
と、その水泡を潰してしまいました。
するとあっという間に
首→腕→おなか→さらには口の中や
顔、全身にかゆみと水泡が広がっていきました。
40度の熱もあり、皮膚科を受診した結果
水疱瘡でした。
私は保育士で、同じ時期に園で水疱瘡が
流行っていました。
はっきりとは言えませんが
おそらく園児から感染したのではないかと
思います。
しかも、
私は子どものころに水疱瘡にかかっておらず
予防接種も受けていませんでした。
医師からは、妊娠中はワクチンが打てないと
言われ、さらには
「初期に水疱瘡になるとおなかの赤ちゃんも危ない」
と言われ、目の前が真っ暗になりました・
私の身体が水疱でボコボコになるのは構わない。
でも、せっかく私を選んでくれた赤ちゃんが
危ない目にあったら・・・
頭の中がぐちゃぐちゃになりました。
家に帰ってからも、
ネットで妊娠中の水疱瘡について調べ
〝初期の感染は流産を引き起こす〟
〝○%の確率で先天性水疱症になる〟
〝胎内感染と水頭症のリスク〟
など、ネガティブな情報に毎晩検索魔になり
眠れませんでした。
しかもつわりも辛く
メンタルは崩壊寸前。
どうにもできない状況に泣いて弱音を吐く日々でした。
正直「若くしての妊娠やし順調に生まれるやろ!」
と思っていましたが
まさか、こんなことになるなんて・・・。
水痘は2週間ほどで引き、
仕事も復帰しましたが
安定期に入るまで不安で不安で、
些細なことも検索せずにはいられず
ピリピリしてしまいました。
毎回健診の前には
何かあったらどうしよう・・・と怖くなり
何も手つかずになりました。
不確かな情報に常に踊らされ
「もし赤ちゃんに障害があったら
全部わたしのせいだ・・・」
と落ち込む私に救いの手を差し伸べてくれたのは
転院先の産科医でした。
不安そうな私に
「初期は胎盤が未完成だから
胎内感染の確率はかなり低いよ!
毎回詳しくエコーして、よく診ておきましょうね」
と言ってくださり、
心が軽くなりました。
エコーでは、かわいい娘の元気そうな姿を
見ることができ、
胎児スクリーニングでも、特に異常はありませんでした。
無事に正期産を迎えることができ
39wで元気な娘に出会えました。
産後も小児科の先生たちで連携をとって
精密検査をしてくださり、
どれも何も心配なく1週間後に退院できました。
産科の先生からは
「大変な水疱瘡やったのに、
こんなにたくさん泣いて、おっぱいもよく飲んで
タフな子やね!」と言われ
不安だった日々から解放されました。
授かり婚だった私には
どうすることもできませんでしたが、
これから妊娠を希望している方々には
ぜひ、自分に水疱瘡の抗体があるのか
過去に予防接種歴があるのかチェックして
安心のマタニティーライフを送れるように
して欲しいです!
水疱瘡だけではなく、
風疹、麻疹など、妊娠中に感染すると
とても怖い病気は他にもあります。
自分について知ることが
こんなに大切なんだということ、
今回身をもって感じました。
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なんらかの細菌、ウイルスが
ママから赤ちゃんに感染することを
『母子感染』といいます。
妊娠前からもともとそのウイルスを
もっているママもいれば
妊娠中に感染するママもいます。
母子感染は、感染時期と感染経路によって
・胎内感染ーおなかの中で胎盤から感染
・産道感染ー分娩中に産道から感染
・母乳感染ー授乳で母乳から感染
3つに分けられます。
水疱瘡は、
水痘帯状疱疹ウイルスの感染にによって
起こります。
ほとんどは9歳以下の子どもが発症し、
日本では、成人女性の95~98%、
ほとんどの人が水疱瘡の抗体をもっていると言われています。
ですが、裏を返せば
100人中5人ぐらいは免疫をもっていないってことです。
この数字って・・・
捉え方によっちゃ、
けっこうな率だとも言えますよね。
妊婦さんは免疫力が低下しているため
水疱瘡にかかると重症化することが多いと
言われています。
ガイドラインによると胎児に感染し、
先天性水痘症候群を発症する率は
妊娠初期で0.5%
妊娠中期で1.4%
妊娠後期で0.0%
先天性水痘症候群の頻度の高い症状は
皮膚の痕跡形成と
それにともなう形態異常で
次に多いのは白内障や脈絡網膜炎、小眼症など
目の異常だとされています。
ガイドラインの数字が物語るように
もしも妊娠中に水疱瘡にかかってしまっても
妊娠全期通して
胎児感染して赤ちゃんにさまざまな異常が起きる率は
とても低いと考えられています。
医師が
「初期は胎盤が未完成だから
赤ちゃんに感染する可能性は低いよ」
とおっしゃったように
胎盤が完成する妊娠中期の胎児感染率が
もっとも高いことがわかりますね。
でも、ゴリゴリに胎盤が機能しているはずの
妊娠後期がなぜ0%なのか?
妊娠後期も、実は胎児感染はします。
ですが、先天性水痘症候群を発症することは
ありません。
なぜなら、妊娠後期の赤ちゃんは
内臓、脳、四肢、目などの感覚器・・・
すべての基礎がすでに完成後のため、
水痘ウイルスが入ってきても
今さらなんの影響を受けないからなんです。
そのかわり、妊娠後期の水疱瘡では
生まれた赤ちゃんの9%が0歳~3歳ぐらいまでに
水疱瘡ではなく、帯状疱疹を発症すると言われています。
(両者は同じウイルスです)
過去に水疱瘡にかかったことがある女性なら
100%免疫をもっていると考えていいです。
予防接種しているときも、まず大丈夫。
ですが、水疱瘡の免疫のない妊婦も
20人に1人ぐらいはいることから
妊娠前に
水疱瘡にかかった歴があるのかないのか。
ワクチン接種の有無はどうか。
確認した上で、もしも無防備な状態で
大人になっているのであれば
病院で抗体があるかどうか検査してもらうか、
もしくは抗体検査をしなくても
水疱瘡ワクチン接種は可能なので
なんらかの予防措置を嵩じておくべきだと
思います。
お手紙の中で
「授かり婚だったのでどうしようもなかった」
と書いてありましたが
計画的妊娠であれ、そうでなかったとしても
特定の彼氏がいて
いつなんどき妊娠してもおかしくない
生活を送っている時点で
自分の未来を考えて先手を打った
行動をすべきだったと思います。
・・・といっても、
医療者でもないのに、
「妊娠中の水疱瘡がもたらすリスク」なんて
おそらくほとんどの人が知るよしもないでしょう。
それが当たり前だと思います。
だからこそ、高校、大学、専門学校、そして職場で
このような『命』にまつわる大切な事柄を
ちゃんと学習する機会を設けるべきなんですよ!
そもそも、
職場が保育園だったわけでしょう?
乳幼児が大勢生活をともにする保育園では
毎年必ず水疱瘡が流行ります。
そして職員の多くは女性であり、
いつ妊娠してもおかしくない世代がほとんどを占めます。
女性保育士さんがもし、園児から感染して
水疱瘡にかかったら・・・
風疹にかかったら・・・
麻疹にかかったら・・・
りんご病にかかったら・・・
そして、そのとき妊娠していたら・・・
職場は職員みんなが安全に働ける環境を
提供する義務があります。
そうであれば、
「妊娠初期に水疱瘡にかかったのは
あなたの自己責任です。
知識がないほうが悪い」
ではなく、
スタッフの感染病履歴や予防接種履歴を把握し、
今後感染の危険があるスタッフには
ワクチン接種を促すなどの予防措置ができる職場だったら
めっちゃカッコイイ〜!
最高な職場〜!
と思います(^ ^)