帝王切開から1年。おなかの傷は今・・・
4人に1人が帝王切開で出産する時代。
分娩方法として
特別なものではなくなりました。
赤ちゃんの安全を優先するために
行われる帝王切開には
婦人科系の手術の既往があったり
逆子など、
妊娠中から経膣分娩が難しいと判断され
前もって手術日を決めて行われる
予定帝王切開と
分娩前や分娩中に赤ちゃんまたはママに
トラブルが起こったり
微弱陣痛などでお産が長引き
赤ちゃんが苦しい状態になるなどの理由で
結果的に帝王切開に切り替える
緊急帝王切開があります。
経膣分娩では、
狭い産道を陣痛のストレスに耐えながら
赤ちゃんは時間をかけて生まれてきます。
もちろんそれは無意味ではなく
とても自然な成り行きであり、
多くの赤ちゃんは
元気に生まれてくるのですが
経膣分娩にこだわるあまり
苦しい時間を長引かせて
赤ちゃんとママを生命の危機にさらすのは
ナンセンス。
そうなる前に帝王切開を選択することが
母子にとって安全、安心の
賢い選択というケースも多々あります。
緊急帝王切開ではとくに
必要だったと頭ではわかっていても
ママの気持ちがついていかずに
「下から産んであげられなかった」ことが
ずっと悔いになって残ることもあります。
人の心の問題というのは
本当にデリケートで
軽視できないとつくづく感じます。
帝王切開の産後は、
ママの心も体も、とくに行き届いたケアが
必須なのですが
切開した傷の痛みやかゆみ、不快感など
長期にわたって地味に悩まされる
帝王切開特有の不調に着目したケアは
あまり知られていないのが実情です。
心の傷もしかり。
関わるママたちがしきりに
産後半年経っても傷がいまだに
チクチク痛い
チリチリ痛い
かゆい
とおっしゃっていて、
帝王切開を経験したことがなかったわたしは
正直、「チクチク」「チリチリ」と表現される
不調の具体的なイメージが湧きませんでした。
第12子で初めて帝王切開を経験し、
「チクチク、チリチリ」が身をもって
わかるようになりました。
ほんと、この感じは
「チクチク、チリチリ」の表現が
一番しっくり来ます!
わたしは現在、帝王切開から
ちょうど1年です。
まだチクチクすることがあります。
また、突然傷痕がかゆくなって
無意識に掻きむしってしまい
朝起きたら傷周辺がヒリヒリするぐらい
傷だらけにしてしまうことがあります。
そのたびに絆創膏で応急処置。
こんなに長引くんだ・・・
正直驚きです。
産後1年。
ねねちゃんはもうスタスタ歩いているし、
もう「産後」とは言えない時期に
差し掛かろうとしているにもかかわらず、
帝王切開の後遺症は
まだ続いているんですよね。
帝王切開後の体の中では
いったい何が起きているのでしょうか。
手術の麻酔が切れる頃から、
傷口の痛みに後陣痛の子宮の痛みが加わります。
術後数日間は活発に傷の修復が行われる時期。
鎮痛剤内服で
強い痛みをコントロールしていきます。
産後1週間、退院の頃からは
新しい細胞が増殖して
傷になった部分を埋めていく時期に入ります。
もう痛み止めはいらない程度だけど
まだ日常動作はスムーズにできないぐらい
痛かったりかゆかったり
意識は常に傷に向く感じ。
1ヶ月検診の頃には
細胞の増殖が落ち着いて
切断された血管や神経もある程度修復され
スムーズに動けるまでに回復します。
そして1年かけてようやく痛みやかゆみも
おさまり、傷跡も目立たなくなります。
・・・というのが、
教科書的な流れなのですが( ̄◇ ̄;)
わたしは
1年経っても痛いしかゆいわ!!
傷跡はピンク色で少し盛り上がっていて
触ると硬いです。
いわゆる肥厚性瘢痕と呼ばれる状態です。
もちろん、切開した位置や大きさ、
縦切開、横切開、縫合の仕方はそれぞれだし、
修復されていく過程も
体質がかかわってくるので
傷の不快感は人それぞれです。
「おなかを切る」
「おなかを縫う」といっても
切開するのも縫うのも
表面の皮膚だけではありません。
皮膚→脂肪→筋肉→腹膜→子宮
おなかの組織は何層にもなっていて
一層ずつ丁寧に切ったりつなげたりしていきます。
それでも
完全に元通りに修復することはできません。
多少のズレがあるまま
各組織はくっついていくので
帝王切開後はどうしても、
本来の柔軟性や伸縮性は失われてしまいます。
手術では、血管や末梢神経も切断されます。
人間には自然治癒力があるので
傷跡の回復とともに血管や神経も再生しますが
このくっつきが悪いと
感覚の伝達がうまく働かず
組織は元のように伸び縮みできないので
地味な痛みやかゆみ、不快感が生じます。
運動したり、重いものを持ったり
ふとした瞬間
傷跡にテンションがかかったとき、
ジワジワ・・・と痛がゆくなります。
気圧が下がったとき、
天気が悪いときにも
腹圧が上がり腹膜が膨脹して突っ張ため
傷跡がうずきます。
わたしの傷跡はおへその下から恥骨の上まで
10cmほどの縦切りです。
ビキニラインの横切りに比べると
日常動作でおなかを曲げたり伸ばしたり
傷跡にダイレクトに刺激が加わる位置なので
縦切りの傷は
円滑に修復治癒しづらいです。
なるべく傷を動かさないように・・・
産後3〜4ヶ月まで
専用テープで傷を保護していたけど
それでもやっぱり
キレイには治らなかったな〜。
すべては切開した組織の柔軟性が失われる
ことによって起きること。
伸びない部分を無理に伸ばそうとしたら
当然痛かったりつっぱり感を感じたり
しますよね。
人間にとって体の柔軟性というのは
健康であるためのとても大切な要素なんです。
筋肉、靭帯、皮膚、膜など
体を構成する組織に柔軟性があるからこそ
多少体を押したり引っ張ったりしても
大丈夫なんですよね。
帝王切開によって柔軟性を失った組織に
加齢という条件が加わって
これらの組織はさらに
ガチガチに硬くなり、
乾燥もしやすくなっていきます。
おなかの組織がいろいろズレていても
せめて、そこに柔軟性や可動性があれば
体は自然とバランスを取り戻し
治癒力を発揮してくれる。
だからこそ、わたしは今、
トレーニングをがんばっているんです!
おなかの保湿も欠かせません!
毎日、ねねちゃんを生み出してくれた
愛おしいおなかの傷跡を
手のひらで優しく撫でて保湿しながら
お礼を言ってます。
我慢できないほど痛かったり
不快だったりするときは
ステロイドの投与や
場合によっては切除術、放射線治療など
形成外科での傷跡治療という方法もあるので
医療機関に相談してみましょうね。
わたしは、
我慢できないほどではないので
これからも自力で付き合っていく
ことになると思います。
帝王切開の傷跡。
今後どう変化していくのでしょうか。
地味なストレスはありますが
なかよく前向きに
付き合っていきたいと思います!