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2015.09.10

精子の旅 〜後編〜

昨日のブログの続きです。

精子の旅、後編です!

さて、第一段階の突破口である
子宮頚管をくぐり抜けた精子たち。

無事に子宮内に入ってからも
気を許すことはできません。

過酷な旅はさらに続きます。

子宮内膜のヒダの凹凸は
小さな精子にとっては険しい道のりです。

酸の膣を通り抜けたあと
子宮内で次に精子を待ち受けるのは白血球の大軍です。
白血球は精子を異物とみなし、総攻撃を加えてきます。
ここでさらに多くの精子は死んでしまいます。

子宮の一番上の部分から
左右両側につながっている卵管入口部に
たどり着く生き残った精子は、
たった1000個ほどになります。

その先
3つめの難関は

目指すべきゴール、
卵子が待っているのは
右の卵管か?左の卵管か?
どちらに進めばよいのでしょうか?

二者択一の選択ですが、
実は精子たちは
卵子を包む「卵胞液」という物質から発せられる
なんらかのテレパシーを感じることで
排卵された卵巣の方向の卵管を進むといわれています。
本能的に進むべき道がわかるのですね。
超音波で意思伝達をするクジラのようです!

精子は
実は射精されてすぐには受精能力はありません。
女性の体内で膣から卵管膨大部と進んでいくなかで
卵胞液の刺激を受けることによって
最終的な受精能力を獲得するんです。

卵管を進む間にも弱いものは次々脱落し、
卵子との待ち合わせ場所、
卵管の一番奥の広い場所(卵管膨大部)に
到着できる精子の数は
さらに減って、なんとたったの数百個です。

卵管膨大部で精子たちは
自分たちが進んできた方向とは逆にある
卵巣から進んでくる卵子を待ちます。

待っている間に精子たちは
卵子の周りを取り囲み守っている
「透明帯」を溶かして侵入する最終準備として
ハイパーアクチベーション(超活性化)を起こします。

今までは直進運動のみだった精子は
ジグサグとうねるように頭部を振り、
激しい運動へと変わります。

なんだかまるで、戦隊モノの「へんし〜ん!!」
みたいですね。

そこへ待ちに待った卵子がやってきました!
精子たちは一心不乱に卵子を取り囲みます。

そして、卵子の中に入っていくために
自身の頭部を保護する役割をしていた外膜を破り、
卵子を覆う透明帯を溶かすための酵素を分泌します。

早いもの勝ち!
必死です!

卵子の透明帯を一番先に通過した精子の頭部が
卵子の核となる原形質膜に到達したその瞬間、
透明帯は性質を変え、
ほかの精子が入ってくるのを
受け付けなくなります。

こうして卵子の核へ一番にたどりついた
強運と運動能力の高いたったひとつの精子だけが
卵子と受精します。

ちなみに一卵性の双子は、
1つの卵子の透明帯を突き破った精子が2匹、
間髪入れずに同時だった、ということですね。
理屈を知ると
なかなかおもしろいですよね。

おびただしい数の精子が
報われない結末を迎える中、
壮絶な旅を勝ち抜いた、たった1個のたくましく幸運な精子と、
卵子1個が結ばれるという壮大なドラマ。

でも、必ずしも卵管膨大部で
卵子と精子が出会えるわけではなく
卵子の命は24時間と短命で、
精子も3日〜5日しか生きられません。
なので、いくら排卵日にセックスできたとしても
卵子と精子が受精する確率はたったの10~20%です。

受精卵は何度も細胞分裂を繰り返しながら
1週間ぐらいかけて子宮へと向かいます。

子宮へ到着した受精卵は
子宮内膜に根をおろし潜り込みます。
これを「着床」といいますが
全受精卵のうち、着床までこぎつけることができるのは
たった20~30%。
80%の受精卵は着床することができず
流れてしまいます。

受精までの精子の道のりはまさにサバイバルだし、
さらに着床までのドラマは奇跡としか
言いようがありませんね。

わたしたち一人一人が今ここに存在しているのは
卵子と精子が受精し、受精卵となったことが
はじまりです。
受精する確率、着床する確率の低さを考えると、
妊娠して無事に赤ちゃんが生まれることは
すごいことです。

受精卵が無事に子宮内膜に着床するまでの
メカニズムを知ることで
おなかの中で芽生え始めた命を
改めて大切に想えますね。

だからこそ、生命は奇跡なのです!

生まれてきてくれて

「ありがとう!」

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