母乳育児はがんばらなくていいんです
「母乳育児」というと、
どんなイメージが浮かぶでしょうか?
ゆったりほほえみながら赤ちゃんを抱くママ。
おっぱいを吸い、
満ち足りた穏やかな表情の赤ちゃん。
絵画などでよく見かける構図の
幸福感あふれる情景です。
妊娠中に読む雑誌や書籍には、
数ヶ月後に迫っているリアルな母乳育児について
細かく記載されているものは
案外少ないです。
さわりの部分だけサラッと書いてあるものがほとんどで、
具体的に母乳育児がどういうものか
その真実はベールに包まれています。
ママたちが「キレイゴトではない母乳育児」を
知るのは、たいてい出産後になります。
首のすわらない赤ちゃんを抱っこするだけでも一苦労。
夜中の頻回授乳で、産後は2時間以上連続で
眠れたことがない。
すぐおっぱいが張ってカチコチになるし、
乳頭はすれて痛いし、
おいしい母乳のために甘いものも食べられない。
母乳量が足りなかったり、逆に出すぎだったり、
ずっと抱っこで肩と腰、腕が悲鳴をあげている・・・
母乳で育てたいけれど
こんな大変な思いをしてまでしたくないかも。
こんな状態がいつまで続くんだろう、
やっていけるか不安。
いっそのこと、ミルクに切り替えてしまおうか?
そんなことを考えてしまう自分への挫折感、
赤ちゃんへの申し訳なさ、罪悪感・・・
多くのママたちが複雑な思いを抱いて
リアルな母乳育児をスタートさせます。
たしかに、とくに初めての赤ちゃんの場合、
わからないことだらけで
ママは苦労の連続でしょう。
「こんなにたいへんだとは知らなかった!」
「この現実を妊娠中に教えておいて
ほしかった!」
そうおっしゃるママは多いです。
先日も産後1週間のママが
涙ぐみながら来院されました。
おっぱいを診せてもらうと、
分泌量もいいし、乳腺開通状況も悪くないし、
乳輪乳頭の柔らかさも問題ないし、
赤ちゃんも元気だし、
ただ
“軌道に乗る前段階のおっぱいなだけ”
でした。
彼女は
「もう断乳しようと思います・・・
母乳を止めて欲しい」
と懇願されました。
そうだよね。
そのうち軌道の乗るって言われても
現実味がないよね。
今この瞬間が彼女にとってはたいへんなのであって、
現実から逃れたいんですよね。
わかります!
子育てっていうのは本当にたいへんだもんね。
でも、ちょっと待ってください。
この時点で
「母乳育児ってすごく大変で
忍耐を要求されるもの」
「自分にはハードルが高すぎる」
と、結論を出すのには早すぎます!
母乳育児が大変だと思うのは
本当に最初だけなんです。
最初の山が、産後3日間。
次が2週間、1ヶ月ときて、
ばぶばぶに通院されているママたちを
見ていると、産後4ヶ月を迎える頃には
多くが
「母乳って楽チンかも・・・?!」
という言葉をポツリと口にされます。
いったん軌道に乗ってしまえば
母乳育児ほどわたしたちの身体に
合っているものはありません。
だって、わたしたちは哺乳類だもーん!!
産後1週間ほどは、初乳と呼ばれる
栄養と免疫物質たっぷりの特殊な母乳が
分泌されます。
初乳が済んで、成乳となっても
赤ちゃんの月齢に合わせてその成分は
微妙に変化していきます。
首すわりの頃の赤ちゃんにはそれに適した成分の母乳が、
そして離乳食を開始した赤ちゃんには
それに見合った栄養分を含んだ母乳が
出るようにプログラミングされています。
わたしたちの身体は
なにひとつムダなく子育てができるように
できているのだから、すごいですよね!!
免疫物質も豊富に含まれていて
母乳の子は風邪をひきにくいです。
抗アレルギー物質は、
アレルギーを発症させにくくします。
肺炎、気管支炎、ぜんそく、胃腸炎、
中耳炎、さらには肥満のリスクが
減ることも知られています。
そして、なんといっても
母乳育児はママと赤ちゃんにとって精神安定剤的な
役目を果たします。
赤ちゃんはおっぱいを吸うことで
安心して眠りにつくことができ、
ママはおっぱいを吸われると
幸せホルモンが脳内に分泌されて
とてもシアワセな気持ちで満たされます。
これが赤ちゃんとの絆を
ますます深めてくれるのですね。
「哺乳」=母乳を与えること
で、赤ちゃんを育てるように
哺乳類の身体は作られていて、
そうやってこれまで何十万年も生きてきました。
そして軌道に乗るまでの
最初のたいへんな時期も
ちょっとしたコツで必ず乗り切ることができます。
もちろん、母乳育児がラクチンどころか
逆にストレスになってしまうママも
います。
なかなか母乳が出ない悩み、
乳腺炎などのおっぱいトラブル、
頻回授乳での睡眠不足、
身体の疲労・・・
母乳育児は一筋縄ではいかないのも確かです。
だからわたしは、
「絶対に母乳でなくちゃいけない」
「完全母乳であるべき」
とは思いません。
ママが笑顔で赤ちゃんに接することができるなら
ミルク育児だって、まったくかまわないと
思っています♪
ただ、それでもやっぱり
母乳のメリットは計り知れないもの。
仮に、ミルク主体になったとしても
1日1回でもいいから
母乳を続けてほしいと思います。
たった1回だけでも、
それでも十分、
母乳は赤ちゃんの身体と心に大きな恩恵を
もたらしてくれると思います!
母乳育児で悶々と
悩んでおられるママは
どうかどうか、
勇気を出して早めに最寄りの助産院に
行ってみてくださいね!
わたしたち助産師は、
ママたちの「たいへん」に
寄り添って支援していきます♪