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2017.02.21

早産児の哺乳力

妊娠34wの妊婦さんが
産前のおっぱいケアでばぶばぶに来られました。

もういつ生まれてきてもおかしくないぐらいの
大きなまんまるのおなか。
側から見れば幸せオーラで包まれているけど
妊婦本人は、大きなおなかを持て余し
もう限界!かもしれません。

彼女は言いました。

「赤ちゃんちょっと大きめみたいで。
34wの健診で、推定体重2600グラムって。
もう十分体重ありそうだから
臨月入る前に生まれてくれてもいいんだけど」

出生体重が2500グラム以上なら
万事OK!

と思っているママは案外多いです。

35wや36wで生まれた赤ちゃんでも
2500グラム以上あると

「ちょっと早めに生まれただけで、
心配するほどのこともなかったわ〜
大丈夫、大丈夫!」

と思ってしまいがち。

見た目、普通の新生児と変わりない大きさなので
NICUに収容されるもっと小さな赤ちゃんほどの
厳しさは感じないかもしれません。

実際、そういうラッキー早産児ちゃんは
早く点滴を外してもらえるし、
思ったより早く保育器から出られることが多いです。

だからある意味、
もちろん生命維持という視点から言えば
「大丈夫」なんですけどね。

でも、体重がたとえ2500グラム以上でも
37w未満で出産すれば早産児なんです。

消化吸収機能、腎機能、呼吸機能
体温調節機能、哺乳力、何をとっても
満期産の赤ちゃんより未熟です。

胎内週数というのは、
赤ちゃんにとっては実はとても重要な項目で、
たとえ体重がしっかりあったとしても
早産児は内臓機能を成熟させる前に
ドタバタと生まれてくるため
37w以降で生まれた赤ちゃんに比べ
哺乳力が弱いのは明白です。

哺乳瓶では上手に飲めても
直母はさっぱり・・・
3回吸っただけで、もう夢の世界へ・・・
というパターンがほとんどです。

いくら大きく生まれた赤ちゃんでも
37wにちょこっと満たなかっただけでも
早産児の口腔機能の発達や吸う力は
正期産の赤ちゃんとはまったく異なります。
「大きく生まれたし、おっぱい飲めるやろ?」は
当てはまりません。

直母どころか、
生まれてしばらくは
哺乳瓶でもグッと一気飲みすることは稀で
チンタラゆっくり〜
途中で寝ちゃう子も多いです。

それでもなかには、
早産だったのに、最初から直母だけで
しっかり飲めた!体重も増えた!
という赤ちゃんもいます。

それはおそらく
ママのおっぱいが分泌過多。
たまたま出過ぎのおっぱいだったため、
赤ちゃんが正しく乳頭をくわえて
正しく舌を使って吸い付くというプロセスを踏まずとも
待っていれば勝手に口の中に
母乳が流れ込んでくる『流し込み授乳』だったか、

もしくは赤ちゃんにくわえさせたおっぱいを
ママが手のひらでギュウギュウ搾りながら、
うつらうつらしている赤ちゃんの口に
自動的に母乳を流し込む『流し込み授乳』の
どちらか、だと思います。

例えば36wで出産したら、
出産予定日まではあと4週間近くもあるわけです。

最低でも予定日ぐらいまでは
直母で量が飲めないのは
当たり前なんです。

ほとんどの早産児は、
ママの乳頭を口にふくんでも、
舌の巻き付けも、舌のうねりのような動きもできません。
数回チュクチュクしただけで、
早くも疲れて白目をむいて脱力〜。

能力のない赤ちゃん、
スタミナのついていかない赤ちゃんに、
ハードルの高い要求を押し付けたって
できるわけないんです。

ママがどんなに
1時間、2時間おきの
頻回授乳でがんばるぞ!と意気込んだところで
赤ちゃんは眠りこけてばかり。
授乳間隔が3時間未満に縮まることは至難の技難です。

搾乳できたら優秀!
ほんの数秒でも
赤ちゃんが上手に吸い付いてくれたらラッキー!
毎日コツコツと少しずつでも
直母の練習ができれば上出来!

ぐらいの気楽な気持ちで
やっていきましょう。

1回の直母哺乳量は、
いいトコ10グラムぐらいでしょうか。
しかたなく、栄養の主体は
搾乳かミルクになってしまいがち。

どうか、それを
『悪』だととらえないでくださいね。
ママのがんばりが足りないからだ、と
自分を責めないでくださいね。

良いとか悪いとかじゃなくて、
そういう段階は、
それでいいのです。

なのに焦って直母にこだわりすぎると、
赤ちゃんは疲労困憊で
搾母やミルクさえも十分飲めず
哺乳量が確保できなくなって
ちっとも体重が増えない
という事態に陥る負のループに
突入してしまうこともあります。

哺乳力の発達が未熟であるという理由で
物理的に直母ができないパターンの
早産児はどんな感じになるか。

・授乳間隔が3時間空いても泣かない
・哺乳瓶で飲ませても指示量が飲めずクタッと寝てしまう
・授乳と授乳の合間はほぼ寝ている
・直母を左右5分ずつ飲ませようにも
途中でスタミナ切れになる
・寝ている赤ちゃんをママが起こせない

以上5項目のうち、
いくつか当てはまる早産児ちゃんのママは
搾乳することで母乳分泌量を維持をしながら
ミルクも足して
赤ちゃんの哺乳能力の向上を
待ってあげてくださいね。

人生には、
どうにもならないことがあるんです。
受け入れなければいけないことが
あるんですよ。

時期が来れば必ず
問題解決への指南が見えてきます。
だからそれまで、
焦らずじっくり待ちましょう!

3ヶ月健診など保健センターでの乳児健診では
早産児であっても
生まれた日から計算した月齢で
満期産の子たちと同じ条件下で実施されます。

そして体重の増えが悪いだの、
発達がゆっくりだの
母子手帳の発育曲線に当てはめて
指摘を受けることが多いのですが

生まれてからの発達、
離乳食の開始などは
修正月齢(出産予定日から計算)で判断するのが
妥当なんです。

せわしなく、生まれてくるのがせっかちだった子は
生まれてからは
じわじわ緩やかに大きくなっていく。
そうして差し引きゼロに微調整していく、
と考えてみたらどうでしょうか?

さて
生まれてしばらくは眠りこけてばかりだった
早産児ちゃんたちも、
出産予定日から2~3w経ったぐらいの時期から
いきなり眠りが浅くなり
飲んでも飲んでも欲しがるようになります。
機嫌も悪く、グズってばかり・・・

今までの様子と明らかに違うので
ママたちはつい、
やっぱりおっぱい飲めてない・・・と
思ってしまいます。

母乳不足じゃないのに、
母乳不足としか思えない状態を
『母乳不足感』といいます。

あまりにもグズるので
ママは不安になり、
本来不要なミルクを補足してしまいます。
満腹感を得られるミルクを飲んだ赤ちゃんは
スコーンと眠ってくれるので、

「ああ、やっぱり足りなかったんだ」

典型的なパターンです。

でも実は、遅ればせながらやってくる
早産児ちゃんたちのママの『母乳不足感』は
正期産で生まれた赤ちゃんたち同等に
体力が追いついてきた兆しが
このようなモーションとして
表された結果だったりするのです。

ようやく直母を飲めるパワーがついてくると
早産児ちゃんたちは

「もっともっともっともっと!!」
「行くで行くで行くで行くで!!」

成長しようとする力強さを
むやみにアピールするようになります。

なので、
あたかも母乳が足りていないようなそぶりで
欲しがってばかりになってきたら
スタミナがついてきたのと同時に
哺乳力の発達が伴ってきたのかもしれないと
考えてくださいね。

ただし、本当に飲んでいる量が足りているか
口腔機能が発達しているかは、
ママの自己判断は危険です。

助産院や母乳外来で赤ちゃんの体重増加率と
おっぱいの状態をチェックしてもらい、
問題がないかどうか診てもらいましょう。

満期で生まれた赤ちゃんなら
生後2週間目ぐらいから。
早産で生まれた赤ちゃんなら
出産予定日から2週間後ぐらいから。

『母乳不足感』はママに忍び寄ってきます。

本当は、妊娠中や入院中に

「赤ちゃんはこのような変化をとげていくんだよ」

ってことを教えておいてあげれば
ママたちは余計な心配をせずに済むのですが、
現実、そういう知識を提供してくれる産院は
ほとんどないと思います。

状況の変化を見極めて、
不要な補足に走らないように
気をつけてくださいね。

母乳は赤ちゃんにとってパーフェクト。

新生児には新生児に必要な成分が。
生後半年の赤ちゃんにはそれ相応の。
1歳児には年齢に適して
母乳は変化していくことがわかっています。

そしてもちろん、早産児には
満期で生まれた赤ちゃんの母乳とは異なる成分の
母乳が与えられる仕組みになっているんです。

赤ちゃんの状態が良好であるという条件下ですが、
24時間以内に母乳を飲ませることで
赤ちゃんの腸内に善玉菌の膜を作って
腸の萎縮を防ぐことが知られています。

また、さまざまなウイルス、細菌から
赤ちゃんを守る感染予防の成分が
満期で生まれた赤ちゃんのママの母乳より
2倍近くも多く含まれるんです!

改めて、母乳ってすごい!
と思います。

最初からうまくはいかないけど、
慌てずにのんびりゆっくり
徐々に直母ができるようになるまで
気長にやっていきましょう。

このブログは
ママたちの心を救う材料として役立つことを願い
がんばって更新しています。

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