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2017.10.25

セラピスト

先日、子育てママを応援するセラピストに勧められて
マクロビ食にこだわったママが
貧血と、うつになって、
自分で自分をコントロールでない状態で
ばぶばぶに駆け込んで来られました。

身体も心も
ちょっと休んだくらいじゃ回復できないぐらい
落ちておられました。

おいしいものを食べに出かけたり
子どもと一緒に太陽の下で走り回って遊んだり
ごくごく当たり前のことができなくなっていました。

適度なマクロビ食で元気ならいいんです。
「毎日楽しくて幸せです!」
と笑顔で言い放てるならいいんです。

問題は
本人が現在の自分の状態を
ほとんど自覚できていないということでした。

わたしは出産前後にうまくいかなくなるママの共通点を
肌で感じています。
たぶん、もうずっと前からいろんなことが
空回ってうまくいっていないだろうことは
一目瞭然なのに

ママ本人は何が自分に合っていて
何が合っていないのかも
麻痺してしまってわからなくなっています。

そういう危険な状態で

自分磨き、博学のため
幸せな子育てのため
家族のため

と言いながら
いろいろなママ向けセミナーやら講習会やらに
出かけて行く・・・

それって大丈夫なんだろうか・・・
しばしば不安になります。

世の中には医療従事者ではないけれど
子育て中のママ向けの講座を開催したり
サロンなどを主催している人がたくさんいます。

セラピストとは
身につけた知識と技術を使って、対象者の心身を癒す
治療技術の専門家です。
世の中には多くのセラピーがあり、その数だけ
セラピストの種類があります。

わたしは助産師ですが、
妊婦教室を行うなかで、あるとき
お産の思考パターンや身体の使い方が
ヨガのそれと共鳴し合っていることに気づきました。

自分自身の妊婦時代
・・・といっても、
過去19年間ほとんどの期間が妊婦でしたが 笑

マタニティーヨガに触れるうち
もっと奥深く、広い観点から
妊婦さんやママたちにアプローチできる術を
学びたいと思うようになり、
第8子を出産後、
とうとうヨガスクールに通い始めました。

素晴らしい人格者や、
見事なまでの器の大きさに尊敬できるセラピストとの
出会いがありました。

そんな偉人たちの影響を受けながら
数ヶ月間のハードな通学を経て
ハタヨガ、マタニティーヨガ、キッズヨガの
インストラクター資格を取得し現在に至ります。

このように
逆に医療従事者のほうが、
さらに知識を広げるために
各種セラピストの認定資格を学びに行くこともあります。

よほど非常識な生き方をしない限り、
人生には、正解不正解がありません。
いろんな価値観のなか、みんな一生懸命に
子どもに向き合っています。
「これ」という答えがない・・・
だからこそ、セラピストという仕事は
実はとても難しく、人間性が問われる仕事だと思います。

医療現場では、「セラピスト」というと
心理療法、理学療法など、医師とチームを組んで
病気の治療に携わる専門家を指します。

でも、一般的に、
「セラピスト」というと、医療レベルには達さない
リラクゼーションレベルのセラピストをイメージすることが
多いのかもしれません。

セラピストは資格の整備が遅れているので
医療レベルでも、癒しレベルでも
同じように「セラピスト」と名乗れるんですよね・・・。

十人十色の人生観、それぞれ違う環境で生きている
子育て中のママに
なんらかの助言をするとしたら
教科書どおりの基本に忠実なだけではまったく足りません。

対象となる人自身、またその人を取り巻く環境を
多方面からくまなく観察することができ、
臨機応変な声かけ、毎回オンリーワンの関わりが持てる
応用力が必須です。

セラピストにその力があれば
関わったママは、自信を引き出され、
希望を与えられることでしょう。
日常生活に支障をきたすような状態には
絶対させないはずです。

だけど、対象の観察を怠り
ワンパターンの理論展開に基づく助言に終始すれば
元気を与えるはずのセラピストによって
逆にママたちは魂を吸い取られ、落胆し、
抜け殻みたいになって
ばぶばぶの門を叩かれます。

そんなケースに出会うたび
本当に切なくなってしまいます。

「助産師さんと他のセラピストって
何がどう違うんですか?」

マクロビにハマってしまったママに
聞かれました。

子育て中のママたちにアドバイスする、
という立場は同じであっても、

わたしたち助産師は、
現場で最悪の結果に何度も遭遇してきた、ということが
他のセラピストと大きく異なると思います。

妊娠出産や子育ては、
おめでたいことばかりじゃありません。

いのちは、ときに、いとも簡単に消えてしまいます。
養生を間違えるとあっという間に病気になります。
産後に至っては、ほんのわずかな気の緩みが
更年期まで影響することさえあります。

妊娠中から健康を気づかっていても
いざお産のときに
なんらかの問題が浮上することもあるし、
防ぎきれない障害を持って生まれてくる赤ちゃんもいます。

ママに指導する立場の人間として
現場を知らないと
相手の未来の状態を予測する力に
欠けた助言に留まってしまうことも
多いように思います。

ママたちに理想論や
きれいごとを伝えるだけではなく
ちゃんと相手を観察して、
ケースバイケースの方法を巧妙に駆使して
肩の力を抜いてあげないと。

向上心を持って自滅するタイプのママには

疲れているんだったら
甘いものでも食べて
のんびり休んじゃえー!

というアドバイスもときに必要。
思うんですよね。

わたしは助産師になって、
きれいごとではない現場を知りました。
いのちの誕生や死という本当にデリケートな側面や
家族のプライベートに慎重に足を踏み入れる毎日・・・

常に神経が張り詰める現場にいたからこそ
ママたちに、今の心や身体の状態を
わかりやすく説明し、健康に導くための
表現力も鍛えられたと思います。

お産は待ったなしです。
1分1秒が勝負になることも多くて
産科という現場は、瞬時の判断能力と技術、
そして強いメンタルがなければ
産科医も助産師も勤まりません。

いろんな意味で体力的にも精神的にも
相当、追いつめられました。
いまだに助産実習に追われている夢に
うなされる日もあります。

でも、その経験を乗り越えてきたからこそ
家事や子育ての手の抜きどころが
わかるようになったし、
自分と、家庭と、仕事と
すべてをバランスよく余計な力を入れずに
こなせるようになったと思います。

助産師歴21年
ママ歴19年

最近やっと、
『自分はどこを無理したら壊れるか』も
把握できるようになってきました。(^^;;

医療職に負けない指導力をつけ
ママたちに尊敬されるようなセラピストが
もっともっと増えればいいなぁと思いますが

それぞれが自分の力量を超えて
必要以上に頑張って、他のフィールドのセラピストと比べて
いい結果を出そうと意気込むと
結局はどれもが中途半端になって
自滅するのがオチだと思います。

専門書を読み漁ったり
セミナーにたくさん出たからといって
それはあくまで『知識』の範囲。
勉強したからすごい人になれるわけでは
ありません。

今まで自分が時間を費やして
ずっとやってきたことこそが
その人の持ち味であり、宝物
ほかの誰にも真似できない個性となります。

だから、
ママに関わるセラピストは
すでに自分が持っている宝の価値に気づき、

私生活の中で、仕事の中で、
たくさんたくさん、いろんな経験を積んで
泣いたり笑ったりしながら
とことんまで自分探しを続けていって
ほしいなぁと思います。

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