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2019.07.19

助産師は寄り添うのが仕事

「お産入院中、
助産師に寄り添ってもらえず悲しかった」

そう話してくださるママが
けっこうな頻度でいらっしゃいます。

また、子育てが始まってからも

「保健師や育児支援に関わる専門家に
寄り添ってもらえず自信を失ってしまった」

わたし自身
『ママの心に寄り添う』ことを
もっとも大切にしながら毎日を過ごしていますが

「寄り添ってもらえなかった」ことで
辛い思いをされているママが
あまりにも多く、

改めて

助産師が「ママに寄り添う」って
どういうことなんだろうかと
考えてしまいました。

こんな言葉をかけることができれば
寄り添えていますよ!
というわかりやすい決まりがあるわけでもなくて

「寄り添う」は、
抽象的で難しい概念です。
明確な答えはないからこそ困惑します。

同じ相手に対して寄り添うときにも
そのときの相手の感情や体調、
取り巻く状況によって
臨機応変、寄り添う方法は変えていかなければ
相手の心には響きません。

下手すりゃ寄り添うはずが
逆に傷つけてしまうことだってあります。

相手の言いなりになったり
喜ぶことばかりをしてあげたり、
依存させることが
寄り添うことではありません。

助産師が、
「わたしはママの気持ちを考えている!」
と思い込んでいても

実際には考えている
「つもり」なだけかもしれなくて

寄り添ってもらっているかどうかを
決めるのは、ママたちです。

自己満足ではなく本当の意味で
人の心に寄り添うのは
本当に本当に難しい。

ママの気持ちを敏感に汲むためには
まず、相手の痛みについての『知識』が必要です。

助産師は『女性に寄り添う職業』なので
プロとして、よく出会う相談事のケースと
その対処法をパターンとして学び、
熟知することは必須でしょう。

知識を深めておくことで
ママたちの抱える悩みのバリエーションに
幅広く対応できるようになると思います。

ですが、『知識』だけでは
薄っぺらくて表面的な「寄り添う」にしか、なりません。

人の心はそんなに単純ではないので
知識によるパターン化された対応では
まったく不足なんですよね。

しんどいときにはこうしたほうがいいですよ。
しんどいときにはこれが役にたって
これは役に立たないですよ。

こういうアドバイスは
単なる知識の押し付けにしかすぎません。

おそらく、ママたちの
「寄り添ってもらえなかった」実感は、

助産師の、相手に共感するための『知識』
または『技術』だけを駆使して
関わろうとした結果だと思います。

共感の技術を持った専門職の
「理解しているつもり」に基づいた関わりは
一歩間違えると
相手を洗脳してしまうリスクがあると思います。

知識や技術はもちろん大切ですが、

ママの悩みに専門的に対処できるかどうか
ということだけではなくて

ひとりの人間として
「相手の悩みを共有したい」と
思えるかどうか、です。

相手の目線に立ち、相手の悩みや苦しみを
相手の気持ちになって考え、
どうすれば彼女が幸せになれるのか?
今この人のために何をすることが最善なのか?

ということを考え始めると・・・

自分が今、相手にかけてあげるべき言葉や
かけない方がいい言葉が見えてきます。

人の心に寄り添うには、
知識と技術、さらには、
自分自身の『人生経験の豊かさ』も必要です。

だけどこればっかりは、
若い独身の助産師さんに
求めてもどうしようもないことです。
経験が未熟だからダメ!って一括するのも
違いますね。

経験が浅いのなら

あなたの悩みを軽くするお手伝いができます、
ではなく

あなたの悩みをわたしの悩みとして
ともに考えさせてほしい

の、スタンスで
コミュニケーション経験を積んでほしいと思います。

その人と、
一緒に悩むことができるかどうか。

もっといえば、ごく自然に
それを自分自身が望むかどうか。

ちなみにわたしの
その気持ちを駆り立てるのは
プロとしての「こうあるべき論」や
「責任感」といった知性的なものではなく

もっと感性的な
ただ「自分がそうしたい」という
めっちゃ主観的なものだったりします。

主観的であることは、
自己満足にもなりかねません。
危険ですね〜!!(笑)

だからこそ、
相手は自分は別の人間であるということを
しっかりと意識すべきです。

自分の見ている世界が
ほかの人にも同じように見えているわけじゃ
ないですから。

よかれと思ったとしても、
助産師が自分の先入観と思い込みを
押し付けるような言動をぶつけてしまえば

それを受けたママは
「寄り添ってもらえなかった」と
悲しい気持ちになるわけです。

同じ人間がひとりもいないように
同じ感じ方をする人もいません。

自分の価値観と相手の価値観を
混同しない能力があってこそ、

相手の立場になって一緒に悩むけれども
心の深い部分まで染み込ませて
自滅するようなことにはならないし、

相手と自分の境界を意識できれば
相手の人格への尊重する関わりを
持つことができると思います。

共感するための
知識と技術を兼ね備えた助産師が
ママの背景を理解することに意識を向け、

相手の価値観の軸だったり、
考え方の癖だったり、
思考のパターンをいったん客観的に分析した上で

飲み込まれてしまうことなく
相手の気持ちに立って

本当に必要な言葉をかけたり
忠実に関わる力が
助産師には求められると思います。

言葉を選ぶことは
相手の人生を左右するぐらい
慎重になるべき重要な要素だと思います。

相手の気持ちに寄り添う想いが
本気の言葉を心に届けます。

その人への理解と共感が
言葉に信頼と説得力を生みます。

よかれと思ってやっても
やりすぎちゃったり、
ツボを押さえきれていなかったり
ピントがズレていたり

助産師も人間なので
失敗してばかりですが

相手の反応を観察しつつ
その心を理解しようと全力で想像力を働かせる作業を
積み重ねていくことで
敬意を持った関わりができるようになっていきます。

そうすれば必ず

「寄り添ってもらえた」と
ママたちの笑顔がもっともっと
広がるんだろうなと思います。

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