歩行器、気をつけてね
生後9ヶ月。
つかまり立ちやおすわりが上手にできるようになり、
動きが活発になってくる月齢です。
活発に動くということは
そのぶんケガをする機会も増えてきます。
「あ、危ない!」
とっさに手が出て身を守ってくれたらいいのですが
9ヶ月児は運動機能がまだ未熟で
自分を守るための受け身ができません。
頭は重いので、
顔からコケたり、後頭部からコケたり・・・
ほっぺたに横一直線のアザ。
つかまり立ちしてて机で強打したなと
一目でわかっちゃう子、
鼻の頭を擦りむいてる子、
(砂利の上で盛大にコケたか?!)
ママがどんなに注意していても
防ぎきれない小さなケガは日常茶飯事になってきて
毎日ヒヤヒヤしますよね。
おでこから左目にかけて、
大きな青アザを作って来院された
9ヶ月の赤ちゃんがいました。
まぶたまで腫れて、とても痛そう!
衣服から見える部分のアザなので
虐待など、よからぬ問題に起因するケガでは
ないのは明らかでしたが
あまりにもかわいそうなお顔になっていたので
そこに触れないわけにもいかず・・・。
派手なけがの原因は歩行器だったそうです。
実家から送られてきたそう。( i _ i )
最近は使っている赤ちゃんは少ない印象がありますが、
昔はごく当たり前に使われていた育児グッズです。
おすわりができるようになって
まだ歩けない赤ちゃん、
歩行器に座らせてあげれば
両足で床を蹴って器用にキャスターを転がし
滑るように移動することができます。
歩行器に入っていると
自分で移動できる上に視界も広がるので
ゴキゲンで過ごしてくれる時間が増えて
ママはイライラせずに済みます。
家事もサクサク進むかもしれませんね。
でも・・・
平らで広い床の上なら安全かもしれないけど
家の中は危険だらけですよね。
9ヶ月の赤ちゃんは、
部屋と部屋の間の敷居、
ほんの少しの段差のところで歩行器に乗ったまま
かなりの加速のまま転倒し、
ケガをしてしまったとのことでした。
子どもは突然
予測不能の動きをすることがありますよね。
いくらママが気をつけていても
守りきれないことがあります。
月齢が進むごとに蹴る力が強くなり、
すごいスピードで爆走したり
段差やコードなどでつまずいたり
便利なグッズである反面、
歩行器での事故は大きなケガにつながることが多いとして、
一部の先進国ではすでに販売中止になっているようです。
日本では現在でも販売されていますが
わたしが第1子を産んだ21年前に比べて
実際に使っているママの話はあまり聞かないし、
歩行器の商品数自体、少なくなったな・・・という
印象があります。
昔は、赤ちゃんを歩行器に乗せて
床を脚で蹴ることは、歩く練習になると
言われていたようですが、
歩行器に入れると
股関節が固定されてしまうため
足腰さえしっかり使えない状態になります。
下半身全体ではなくつま先だけを使うことになるので
歩行の練習にはまったく役に立たないというのが
現在の考え方です。
そもそも、歩けるようになるのに必要なのは、
下半身だけではなく
全身の運動機能の発達です。
股関節の稼動、下半身の筋肉が強くなると同時に
上半身(体幹)の筋肉、背骨が発達し、
肩や腕、背中の筋肉がついてくることで
全身のバランスをとって
上手に歩けるようになるのです。
寝返りの練習や
おすわりの練習をさせようとするママが
ときどきいらっしゃいますが、
赤ちゃんのうちは
本人の発達に任せることがもっとも自然です。
首がすわり、寝返りをして
ずりばい、やがて腰をあげてハイハイ、
つかまり立ち、つたい歩きを経て
一人歩きへと移行していくのが一般的ですが、
教科書通りの順番を守らない赤ちゃんだって
たくさんいます。
さまざまな『発達』は
みんなそれぞれのペースがあって、
一律ではありません。
その子なりの能力がまだ伴っていないのに
「○ヵ月だから」という理由だけで
やらねばならぬ!
あなたはやればできる子よ!
無理して練習させられても
赤ちゃんの身体に負担がかかるだけですよね。
そんなん、かわいそうやでー。
田舎の広い家だったらいいのですが、
都会では、大きな空間での子育ては
期待できません。
いろいろな生活用品が
所狭しと置かれた部屋で過ごすので
好きなだけズリバイやハイハイ、しづらい・・・
ちょうどいい高さのソファや
ローテーブルなどが置いてあるので、
つかまり立ち、つたい歩きのできる月齢が
今の赤ちゃんは昔の赤ちゃんより早くなる傾向があります。
ズリバイ、ハイハイの期間が短くなってしまうと
筋肉や体幹がしっかりすることなく
成長してしまいます。
つかまるところがなければ
赤ちゃんはハイハイを優先する・・・
はずですが!!
うちの11人目ちゃんは
ハイハイをしない赤ちゃんでした。(シャフリングベビー)
ハイハイすっ飛ばして
歩き始めてしまいました。
ハイハイスペースを作ってあげたのに。
なんでー。
彼女はまったくハイハイをしませんでした。
うつ伏せ姿勢が極端に嫌い。(笑)
『ハイハイは大事。
しっかり腕、足、体幹、全身を使うことは
運動系だけでなく脳の発達にもつながる重要なプロセス』
とも言われますが、
わが家の2歳児、ととちゃん、
脳の発達、大丈夫そうですよ。(^^;;
こういう個性的な発達をする子もいるので、
必ずしも、ハイハイをしないことが「悪!!」ではないということも
ママたちは頭に入れておいてくださいね。
ハイハイ期間が短かった子には
歩き始めてからでも、
腕の力を使う遊び(ボール投げなど)
体幹を使う遊び(バランスボールなど)
楽しみながら全身の筋肉をつけていくような
遊びを取り入れるといいと思います。
ママがおでかけするのが苦痛でなければ、
支援センターや児童館など
赤ちゃんが自由に動ける広い場所へ
連れて行ってあげるのもいいと思います。
(ただし、ママが苦痛なのであれば
無理して出かける必要ありません!)
赤ちゃんは、
自分の力で動くことが大事なのであって、
自然に任せた結果、
赤ちゃんが個性的な発達をしていくのなら、
それはそれでOK。
ただ、本当はハイハイする子なのに、
本当は自力でおすわりしたい子なのに、
歩行器に入れちゃったがために
その機会を失った・・・のではあれば
申し訳ないですよね。
歩行器を使ってみようかな、という人は、
赤ちゃんを遊ばせるための短時間のおもちゃとして
必ず大人の目が届くときに使うようにしましょう。
歩行器に乗せたまま
目を離して家事をすることがないように・・・。
歩行器自体が重量があります。
さらに加速が可能なグッズである以上
転倒したときには大事故につながる可能性が高い、
ということをよく理解した上で
安全な使用をお願いします。