授乳→我慢できないほどの不快感が襲ってくる
赤ちゃんに授乳を始めると
突然・・・!
ザワザワザワ・・・・と心がザワついて
不快でネガティブな感情が襲ってきたり、
動悸がしたり変な汗が噴き出してきたり、
気分が悪くなるという
ママたちからの相談がときどきあります。
おっぱい育児=ハッピー
一般的なイメージからは
ちょっと想像しにくい症状で
Dysphoric(不快)
milk(授乳)
ejection(噴出)
reflex(反射作用)
Dysphoric milk ejection reflex
略して『D-MER』
美しい日本語にすると、
『不快性射乳反射』
わかりやすい日本語にすると
『おっぱいおあげようとしたら嫌な気持ちになるんだよぉ!』
D-MERが認知され始め
美しい日本語バージョンでこの症状が語られ始める前から
母乳育児支援の現場では
わかりやすい日本語で
「授乳が気持ち悪くて不快でたまらない」
と訴えるママはけっこういました。
これってなんやろなぁ・・・?
わたしはずっと考え続けてきました。
授乳中のママの身体からは
母乳生成ホルモン『プロラクチン』が大量に分泌されて
乳房内で母乳が作られ蓄えらています。
赤ちゃんがチュクチュク吸うと
その刺激が母体に伝わって
『オキシトシン』というホルモンが分泌され
蓄えられた母乳を乳頭に向かって勢いよく噴出させます。
オキシトシンは別名、愛情ホルモンとも呼ばれていて
楽しい、嬉しい、幸せだと感じたり、
これからワクワクすることが待ち構えているとき、
友達に親切にしてもらったとき、
心を許した相手と会話したときにも
分泌が促進されることが知られています。
それゆえに、
オキシトシンは、おっぱいホルモンであると同時に
母子の絆をつなぐ愛情ホルモンだと考えられています。
つまり、授乳するという行為は一般的に
赤ちゃんをかわいいと感じたり
幸せを感じたりして
母性を育む役割を担うと信じられているので
『授乳するとママは幸福感に包まれるのが当たり前』
という構図が定説になっています。
でもこのホルモン。
愛情ホルモンであると同時に、
赤ちゃんを守るための
ママの攻撃ホルモンとも言われています。
生物学的に哺乳類のメスは、
最優先で守らなければならない小さなわが子を
敵から遠ざけようとします。
2人の甘い関係を覆すものは、
たとえ旦那であっても上の子であっても排除!
(上の子は最優先で守る対象ではなくなる)
『敵』と認識すると防御反応が起こり、
戦闘態勢に入ります。
授乳期間中に性欲がなくなったり、
パパに対してやたらとイラっとすることが多くなるのも、
急に上の子がかわいいと思えなくなるのも
オキシトシンが原因。
その攻撃性が、
どこかで方向性を見失って
最優先で守るべき赤ちゃんに向けて
『授乳したくない!』と作用してしまうのが
『おっぱいおあげようとしたら嫌な気持ちになるんだよぉ!』
を引き起こす原因なんじゃないか、と
仮説を立ててきました。
その後、ここ10年でようやく研究が進み、
D-MERとか不快性射乳反射という名称が
使われるようになりました。
でも、医学的にはわかっていないことだらけ。
ハッキリした原因は今だに解明されておらず
〝仮説〟の段階であることは変わりありません。
現時点、有力なのは以下の諸説。
人間の身体は、器用なようで不器用です。(^_^;)
攻撃性が増すのなら、それを抑え込むホルモンが
均衡を保つように分泌促進すればいいのに、
残念ながらオキシトシンが活発に働くとき、
脳内では『ドーパミン』というホルモンの分泌が
一時的に低下することがわかってきました。
ドーパミンは、満足ホルモン、安心ホルモン
とか呼ばれています。
極端に不足すると
うつ病にかかりやすくなることでも
知られていて
授乳時に一気にドーパミンの値が低下するということは、
不快感や不安、いたたまれないようなザワザワした気持ちが
押し寄せてきても、おかしくないわけです。
つまり、生理学的な観点からいえば
授乳を幸せだと感じられないのは
異常でもなければ母性がないのでもなく、
ただ単純に、ホルモンに振り回されてるだけ!
ってことになりますね。
わたしたち人間は、
ホルモンと大自然にはどう頑張ったって
逆らえないちっぽけな存在だなぁと思います。
自分の意思ではコントロールできないものなんです。
例えばわたしが
20歳に戻りたい!
っていくら願っても、どうすることもできません。
わたしは年齢を重ねていく自分を受け入れるのみ。
それと一緒のことやと思うんです。^ ^
だから
『おっぱいおあげようとしたら嫌な気持ちになるんだよぉ!』
になったとしても
あがいたところでなんにも変わらんのやし
治療法があるわけでもないんやし
あ。わたしはそーゆうタイプね。
は〜い了解!
認めて受け入れるのがもっとも得策です。
ホルモンのなせる技は、
自分で調節することなどできません。
つまり、感情は自分の意思ではコントロール
できないものなんです。
でも、
ママたちは、
自分が我慢さえすればいいこと・・・
ママだから我慢しなければいけない・・・
母乳育児は愛情の証・・・!
と苦痛を押して
頑なに母乳育児を押し通していたりします。
本当は母乳をあげたいのに、
なぜこんなに嫌な気持ちになるのか・・・
自分の感情のブレ方がよくわからなくて
途方にくれるやらショックを受けるやら。
『おっぱいおあげようとしたら嫌な気持ちになるんだよぉ!』
と、正直な思いを表現できるママはまだいいけど
自分の感情のブレ方がよくわからなくて
途方にくれるやらショックを受けるやらで
ひとりで悶々と悩み、自信喪失しているママは
おそらく相当数いて、
気の毒でなりません。
D-MERの症状にも、
軽症から重症までいろいろあります。
なんともいえないモヤモヤした気持ちになるのを
通り越して、パニックになったり、
泣き始めてしまったり、嘔吐するほど
ひどい症状に悩まされる場合もあるんです。
もちろん、嫌な気持ちになるけど
少し耐えればがんばれそう
というレベルのママは
できるところまで母乳育児を続けていけばいいと思います。
重症のママは
支援する側としては見るに忍びないぐらい
辛そうなので
「ねぇ!断乳しちゃおうか!」
と提案することも。
だって、無理して母乳を進める必要なんかないんですよ。
『赤ちゃんがママに何を望んでいるか』
彼らにとって大切なのは
母乳を飲むことじゃありません。
赤ちゃんがもっとも嬉しいって思うのは、
ママが笑顔でいることですよ!
自分の育児、自分の感情に
まっすぐに生きてほしいと思います。
進む勇気も必要だけど、
やめる勇気も必要。
ママに必要なのは、
アクセルとブレーキのバランスです。
アクセルばっかり踏んでたら事故るよ。
子育ては、
なんでもかんでもママががんばればそれでいい、
というほど単純なものではありませんよ。
自分に合った方法を選択し、
「母乳育児こそが母の鏡」のような
偏った先入観にとらわれずに肩の力を抜く
ことのできる賢いママになりましょう!
『おっぱいおあげようとしたら嫌な気持ちになるんだよぉ!』
・・・でもちょっとの我慢で
母乳育児続けられる!
というママは、
授乳前に美味しいものを食べたり、
好きな動画を見たり、
ウキウキするようなことをあえて考えたりして
オキシトシンを正しい方向に作用させる工夫、
ドーパミンの分泌低下をちょっとでも抑える工夫、
してみましょう!
あ、これらのホルモン変動をさらに促す
搾乳はやめちゃったほうがいいと思います!
とくに珍しくはない、D-MER。
もしかしたらあなたにも、
心当たりがあるかもしれません。
そうであったとしても異常ではないし、
そんなことでママの愛情は測れません。
そして、どうしても辛いなら、
ママの気持ちに正直でありますように・・・♪