新生児覚醒期
生まれたての赤ちゃんを観察していると、
分娩台のママの胸に抱かれるまでの処置の時間、
出生から約1時間はパッチリと目を開けて
起きているのが分かります。
温かい羊水から寒くてまぶしくてうるさい場所に
あっという間に出てきて、
その途端に自分の肺で呼吸を始めなきゃならない。
これまで経験したことのないことが
一気にやってくるのです。
視ること、聴くこと、触ること、皮膚の感覚、手足の感覚など、
あらゆる感覚の激変が、ほんのわずかな時間で起こるんだから、
眠ってなんかいられないかもしれないね。
最低でも産後1時間
赤ちゃんがパッチリ起きているのと同時に
ママも眠ることができません。
わたしも、どんなに時間がかかって
ヘロヘロになるお産でも、10回ともお産直後は
大興奮状態だったなぁ〜。(笑)
ママと赤ちゃんは、
へその緒を切られて離ればなれになっても、
産後すぐから身体のリズムがほぼ同じにできているんです。
すごいことですよね、ママと赤ちゃんは一体で、
それが卒乳の頃まで続くのだから!
さて、出産後1時間の赤ちゃんの目覚めを、
医学的には『新生児覚醒期』と呼びます。
分娩体験は、ママにとっても赤ちゃんにとっても、
人生最大級とも言えるストレスなんですね。
陣痛(子宮収縮)は胎盤を圧迫するので、
へその緒を流れる血流が悪くなります。
陣痛発作が来るたびに、
おなかの赤ちゃんは酸欠状態になって、
しかも、キュゥゥ〜〜っと全身が左右上下
ありとあらゆる角度から締めつけられます。
分娩時のもうひとつの大きなストレスは温度差。
温かいママの胎内から、いきなり25℃ぐらいの
室温にいきなり産み出されるのですから!
しかも、赤ちゃんは羊水や血液で濡れているので、
このときの温度差は、なんと12〜13℃にもなります。
そりゃ〜寒い!!
このように、赤ちゃんは酸欠、身体の圧迫、温度差の
3つのストレスから身を守るために、
副腎皮質から『アドレナリン』というホルモンを大量に分泌します。
アドレナリンは、急に襲ってくるストレスに
耐えられるように呼吸、循環、血圧などの生体機能を
瞬時のうちに正常に維持して切り抜ける
『緊急ホルモン』とも呼ばれていて、
新生児覚醒期があるのは、
実はこのアドレナリンのおかげなんです。
意識がハッキリしているからこそ、
胎内から外環境への適応切り替えが
上手にできるシステムになっています。
これもまた、自然の神秘ですよね!!
ママにとっても、分娩はすごいストレス。
あの痛みに耐えるんだもの。
だから、母子ともに、分娩直後の血中には
アドレナリンがいっぱいなんです。
みなさんは分娩台の上で、
赤ちゃんにおっぱいを吸わせましたか?
ストレスから開放された赤ちゃんは、
まもなくアドレナリン濃度も低下、
分娩の疲れを癒すように、深い深い眠りに落ちます。
この眠りに入った赤ちゃんは、
ちょっとやそっとでは起きません。
生まれて1時間以内にママのおっぱいと
接触した赤ちゃんは、
今後の母乳育児に好影響を及ぼすと言われます。
もちろん、それをしなくても
母乳オンリーで頑張っているママも
たくさんいらっしゃるので
一概には言えませんが、
できればせっかく自然に備わった新生児覚醒期、
ママのおっぱいとは、ともに長い旅に出るんです。
そのスタートライン、
しっかりご挨拶しておかなきゃって思います。
お産を控えたみなさんは
赤ちゃんとママの状態が安定していることが前提ですが、
分娩台の上で是非、
おっぱいをあげてみましょう。
舐めるだけでも構わないから。
ただし、出産直後の赤ちゃんは、まだまだ体温調節も
呼吸の状態も不安定です。
ですから必ず助産師さんについてもらった状態で
行うことが大切だと思います。
いわゆるカンガルーケア、
今、ちょっと問題になっていたりもするんですが、
安全を期した環境の中でのカンガルーケアには
やはり大きな意味があると思います。
帝王切開でも同様、出産時にはどんなお産であれ
母子ともにアドレナリンは分泌されます。
なので経膣分娩でも帝王切開でも、大差なく
なるべく早期におっぱいを吸わせられたら素敵ですね♪