採精室、なんとかならんのか!
健康な男女が避妊せずに性生活を送っているのに
2年以上妊娠しない場合に
「不妊症」という診断がつきます。
でも、実際の臨床現場では
2年は長すぎるという考え方もあり、
1年以上妊娠の兆候がない場合には
早めに婦人科を受診したほうが無難という
意見もあります。
そうはいっても、男性は自分が尊敬され
尊重されているかどうかに
驚くほどこだわる生きものなので
不妊治療を受けるぐらいなら
子どもはいらない、と考えてしまう人も多いのが事実です。
産婦人科を受診するなんて、プライドの生きもの、
男性にとっては、想定外なのかもしれないですね。
不妊の原因の約半数は男性側にあるのに
不妊治療に対する男女の意識は
いまだにズレたまま。
本当に難しい問題だと思います。
職業柄、婦人科クリニックの採精室を
訪れる機会がありました。
採精室ってわかりますか?
精液検査のため、マスターベーションで
専用の容器に精液を男性自ら
採取してもらうための部屋のことです。
細やかな配慮のうえ、
メンズルームとかプライベートルーム、
リフレッシュルームなどと
ちょっとオシャレな名前がつけられて
検査を受ける男性が少しでもリラックスできるよう
こだわりの造りのクリニックもありますが、
なかには
「トイレで採取してきてくださいね」と
それ専用の部屋さえも
設けられていないクリニックもあり驚きます。
トイレだなんて
ひどくないですか?
男性心理がよくわからない女性のわたしでさえ
ドン引きします。
男性をなんだと思っているんでしょうね?
どんな思いで、彼がクリニックの門をくぐったか
医療期間はもっと真剣に考えてほしいものです。
狭い開放感のかけらもない部屋に
小さなテレビとエロビデオ、
エロ雑誌、椅子があるだけ。
ひどいクリニックだとパイプ椅子。
親切なクリニックだと小さなベッドがあったり
フカフカのリクライニングチェアが
置いてあるところもあります。
あとは、無機質な洗面台と
ティッシュがある程度。
精液検査を受けた男性に聞くと、
部屋に置いてあるビデオや雑誌は、
万人向けであるために、無難なものばかりが
チョイスしてあって、とてもじゃないけど
射精を促せるような代物ではなかったりするようです。
「虚しさと、恥ずかしさ、焦り・・・
そんな感情しか湧いてこない」
そうなんだね・・・
不妊検査、治療は女性も辛いけど、
男性は「プライド」という部分で
女性以上に傷つくのかもしれないです。
彼らの気持ちを考えたら切なくなります。
緊張のあまり、勃起しなかったり
射精に至らなくて余計に焦って
堂々巡りになる男性もいらっしゃるので、
クリニックで精液採取する場合は
部屋に置いてあるビデオなどに頼らず
マスターベーションの材料は自分で準備して行ったほうが
よさそうです。
また、部屋の外は
所詮、レディースクリニック。
女性ばかりの空間なわけで、
そういうことを考えたら射精なんてそうそうできることじゃ
ないかもしれません。
部屋の外を誰かが歩く音や
話し声が聞こえてきたら、男性は集中できないと思います。
なので、親切なクリニックでは防音にしてくれていますが、
まだまだそこまで細やかなクリニックは少数派でしょう。
こんなところで
いきなり「マスターベーションしろ!」
って言われても・・・
受診されているご夫婦は
みんなが同じ気持ちで待合室にいらっしゃるのですが
きっと男性心理からいえば
採精室に入ってから出るまでの時間、
早すぎたらなんと思われるだろうか?
長すぎてもなんだかかっこ悪い・・・
時間制限があるわけではないけど、
クリニックが混んでいるときなどは
明らかに順番待ちのカップルが
待合室にいらっしゃったりもして。
いろんな葛藤が
あるだろうなぁと思います。
男性って本当にデリケート。
普通の性生活においても、
例えば妊活中のママが気合が入りすぎていて
「今日は排卵日だからね!早く帰ってきてよ!」
と言われたりすると
心理的に、それだけで萎えてしまったり
するぐらいです。
不妊治療の現場は
人間の尊厳に関わる場所なんだから。
すべてのクリニックの採精室は
最優先で完備されるべき!!
って思います!!
百貨店やショッピングモールの授乳室が
ホテルみたいに行き届いているのが
当たり前の時代だけど
そんなことより先に
考えなくちゃいけないことがあるはずだ!と
実際の採精室に入ってみて
強く強く感じたのでした。