キンモクセイ
10月になってうちの近所では急に
あちこちにキンモクセイの花が咲いています。
キンモクセイの香りが漂ってくると
わたしは毎年、中学3年生のときの部活を思い出します。
同級生たちはもうみんな部活を引退して
受験体制に入りつつあるなか、
わたしは10月末のジュニアオリンピックに向け
ひとりだけ遅くまで練習していました。
東京、国立競技場で開催されるジュニアオリンピックは、
中学最後の集大成の大会でした。
これが終わったらいよいよ引退。
大会に照準を合わせ、モチベーションを上げ
精神力と身体を最高の状態に
仕上げていかなければならないのですが
夏場の明るく燃え上がるオンシーズンと違って
秋になると日が落ちるのが早いし、肌寒いし、
後輩部員は隣で練習しているものの
同級生はみんな引退してるし・・・
広いグラウンドでひとり
ハードルを並べて走っているのが
なんだかとても、もの寂しく
ため息が出るような、涙が出るような、
なんともいえない切なさがありました。
わたしにとって、キンモクセイはそんな青春時代の自分を
思い出す匂いです。
キンモクセイの香りはかなり強烈なので
苦手だという人も多いみたいですね。
「トイレの芳香剤の匂いやん!」
という意見もたびたび耳にします。(^^;;
花言葉は「謙虚」
小さくて目立たない花なのに
個性的な香りを漂わせるキンモクセイは
わたしにとっては癒しのパワーに満ちて
いとも簡単に過去にタイムスリップできる必殺アイテムです。
キンモクセイに限らず、特定の匂いを嗅いだときに
「懐かしい・・・!」と思うこと、ありますよね。
過去に目で見たことや、耳で聴いた音、
また、そのときに感じた感情などの記憶は
時間とともにだんだん薄れていきますが、
匂いだけは、『その匂い』を嗅いだ途端に
当時の情景や気持ちが、そのときのままに
とてもリアルに蘇る気がします。
実際、匂いは、さまざまな記憶を鮮明に
フラッシュバックさせる作用があるそうです。
人間の脳のうち、
記憶や情動、喜怒哀楽をつかさどっているのは
『本能の脳』と呼ばれる大脳辺縁系という部分です。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚
五感のうち、嗅覚以外の4つは
視床下部を通って大脳皮質のそれぞれの
感覚領域に情報を送り、
それから大脳辺縁系に信号が送られます。
簡単にいうと、いろんな場所を経由しながら
最終的に記憶や喜怒哀楽を起動させる場所に到達するんですね。
嗅覚だけは、大脳皮質という中継地点を
すっ飛ばして、大脳辺縁系にダイレクトにつながります。
要するに、近道して目的地に到着するから
他の五感と比べて喜怒哀楽や記憶への影響が
大きいのだそうです。
人は、情報の8割以上を視覚から得ますが、
感情の8割は匂いなのだそうです。
匂いが、人間の記憶や感情に訴えかける
最高のツールなのだとすると
喜怒哀楽の激しいわたしは、嗅覚に優れているのでしょうか?
犬みたいやなぁ〜。
わたしの住んでいるところは自然がいっぱいなので
キンモクセイの匂いとともに
スズムシ、クツワムシ、マツムシ、コオロギなど
日本の秋の到来を告げる秋の虫たちの鳴き声が
風情を感じさせてくれます。
そしてあっという間に季節は移りゆくのですね。
四季のある日本に生まれて幸せやなー。
キンモクセイの匂いを胸いっぱいに吸い込みながら
放課後、秋の夕焼けに染まったグラウンドで
並べられた10台のハードルに黙々と挑んでいた15歳の少女は
半月後に開催されたジュニアオリンピック決勝で
表彰台をかけて気迫レベルを最高水準に持っていきすぎ、
勢いあまってハードルに足を引っかけ、テレビ中継の入っているなか
ブザマにコケる・・・という有終の美を飾ることになろうとは
夢にも思っていませんでした(^^;;