こんにちは赤ちゃん事業
過去10年間、
わたしは市の育児支援事業に携わってきました。
『こんにちは赤ちゃん事業』ご存知でしょうか。
妊娠出産経験のあるみなさまには、
馴染みのある名称かもしれませんね。
都会・大阪市では20年以上前から
助産師による新生児訪問が行われていましたが
地方の小さな市町村も含め、
全国的な育児支援の一環として
児童福祉法に基づき、2007年に厚生労働省は
『こんにちは赤ちゃん事業』を創設しました。
新生児〜3ヶ月健診までの低月齢の赤ちゃんがいる
すべての家庭に担当員が訪問し、
育児環境の把握や子育ての相談に応じたり
ときには必要な支援情報を提供したり、
専門機関との連携・橋渡しをします。
わたしが訪問員を始めた15年前は、
希望者と、あらかじめ支援が必要だと把握されている家庭にだけ
訪問を行なっていました。
時代は移り、いつしか希望者だけではなく
『乳児家庭全戸訪問』ということで
選り好みなく、すべての家庭が対象になりました。
昔と違って今は
頼れる身内や友人が近くにいなかったり、
子育ての相談相手がいなかったり、
旦那の協力が得られないワンオペ育児など、
不安やストレスを感じながら
子育てに取り組んでいる孤独なママが
少なくありません。
そうした環境が産後うつを発症させたり、
産後クライシス、赤ちゃん虐待を
引き起こすリスクとなります。
だからこそ『こんにちは赤ちゃん事業』で
赤ちゃんがいる全家庭と地域をつなげることは
大切だと思います。
どのような社会的立場の人が訪問に来るのかは、
自治体によって異なります。
大阪市では、
正常新生児の家庭には助産師が訪問します。
低出生体重児や未熟児、早産の赤ちゃんに対しては
保健師が訪問することになっています。
ですが地域によっては
民生委員、児童委員が訪問員として
活動されていることも多いようです。
民生委員・児童委員とは
地域の住民生活を必要に応じ適切に把握し、
生活に困った人や児童の保護・育成などの
福祉について相談を受け、自立を助けるために
必要な相談・支援を行う地域福祉推進の担い手
です。
みんなが快適に暮らせるように
支援してくださる民生委員や児童委員さんには
尊敬に気持ちでいっぱいです。
それを引き受けてくださる度量の大きさに感謝です。
地域を総括できるほどの
エネルギーを持った中心的存在であり、
みんなの肝っ玉お母ちゃんだからこそ
聞き上手で不安でいっぱいのママたちを
優しい笑顔で癒してくださる力を
持っていらっしゃることと思います。
でも・・・
残念ながら、民生委員は
助産師や保健師などのように
現在の最新子育て事情や小児科等の医学的な
エビデンスに基づく知識を
持っていらっしゃいません。
赤ちゃんの発育発達、授乳、病気の予防、
産後のママの身体、心の相談、
専門色の濃い保健指導に関しては、
民生委員さんにできなくて当たり前なんです。
ばぶばぶは大阪市外からも
たくさんのママたちが来院されますが、
『こんにちは赤ちゃん事業』での
訪問員の言動で、不愉快な気持ちになったという声を
しょっちゅう聞きます。
でもきっと、民生委員さんは
地域のママたちのために、
引き受けたからには心を込めて
「支援してあげたい」という想いで
訪問してくださっているはずだと思うんです。
なのに、
訪問されたママから
「嫌悪感しかありませんでした」
「不信感しか残ってません」
「ただ疲れただけ」
「なんの意味があって訪問されたのかわからない」
という話を聞くと
なんだか切なくなってしまいます。
こんにちは赤ちゃん事業の訪問員を決めるのは
それぞれの自治体だから、
民生委員さんだって、
「行きなさい」って言われたら
知識がなくても従うしかないわけで。
遠い昔の子育て経験の記憶を手繰り寄せて
古い価値観を押し付けられるような
アドバイスしかできなくても、
しょうがないのではないかと思うのです。
出産・子育て経験のない民生委員さんが
赤ちゃん訪問を担当されているような場合には、
もはや話にもならないかもしれませんね。
訪問する民生委員も、訪問されるママも
両者が困惑するだけの訪問員の選択・・・
これ、なんとかならないものでしょうか。
産後のママたちは心身ともに
とてもデリケートな時期にあります。
それでも、真面目なママは
赤ちゃん訪問があると言われれば、
その日に合わせて必死で家の中を片付けます。
部屋がぐちゃぐちゃでも、
化粧っ気もなく髪を振り乱しても
赤ちゃんに向き合ってほしい時期なのに。
産後のママにとって必要なものとは?
意義ある家庭訪問とは?
もっとちゃんと考えて、
訪問員の選出をしてよ〜!
って
日本全国の自治体に言いたいですっ!