それは副乳です
第2子妊娠9ヶ月。
彼女は産前おっぱいケアで来院されています。
3年前の第1子のとき
度重なるおっぱいトラブルで相当苦労したので
次こそは順風満帆な授乳生活をスタートしたい!
とのご希望で、
妊娠20w(6ヶ月)から定期的に来院され
お産に向けて授乳に適したおっぱいの
下準備を進めているところです。
先日、彼女は
右の脇の下(腕の付け根のあたり)の
大きなしこりに気づきました。
痛みもあったのだそうです。
これはもしかしてウワサの副乳?
やんわりと知識は持っていたけれど、
1人目のときは妊娠中も授乳中も
まったく気づきませんでした。
てことは、副乳じゃなくて
もしや乳がん?!
不安になって乳腺外科へ。
診断はやはり『副乳』でした。
でも彼女はどうしても腑に落ちません。
だって1人目のとき、
副乳なんてなかったはずやもん!
「副乳って、
いきなりある日突然現れるものですか?」
ごもっともな疑問ですね。^ ^
はい。
実は副乳は、突然現れることがあります。
1人目では副乳の存在に気づかなかったのに
2人目になって今さら副乳が現れるということも
あり得ます。
副乳がある人は、もともと先天的に持っていますが、
普段は目立たず気づくことがありません。
乳腺が急激に発達する妊娠中や授乳期に
発見することが多いです。
じゃあどうして、1人目のときには
気づかなかったのでしょう?
妊娠経過や授乳の経過が
毎回同じではないように
乳腺の発達も、同じ女性が妊娠しても
毎回同じ箇所が同じように同じスピードで
発達するわけではありません。
1人目より2人目、妊娠中の乳腺の発達が
たまたま脇の下に集まって
活発だったために、前回は、なりを潜めていた
副乳が姿を現したのかもしれませんね。
おっぱいの原形は、
わたしたちがママのおなかに宿ってすぐの頃、
妊娠4wの胎芽時代にでき始めます。
左右のわきの下になる部分から、
2つの乳頭、脚の付け根にかけての線上に
組織が盛り上がって、2本の乳腺の元を作ります。
そして、その線上のところどころが
さらに肥厚、増殖して
乳腺、乳頭となります。
普通は妊娠5wには、
そのほとんどは消失、1対だけが残ります。
だけど、ときどき
消えるべきものが消えずに、
そのまま発育してしまうことがあり、
それが将来「副乳」となって残ります。
だから、副乳のある人はわきの下から
脚の付け根を結んだ線上に、
第3の乳頭、第4の乳頭があることがあります。
基本的に人間は1回の出産で
1人か2人の赤ちゃんしか産まないので、
おっぱいは2つだけど、
犬や猫、人間以外の哺乳動物は
4頭、5頭とたくさんの赤ちゃんを産むために
この線状にたくさんおっぱいが存在します。
一度に生まれてくる赤ちゃんの数が多いから
動物はたくさんの乳腺組織が消失せずに発達して残り、
機能を発揮するのです。
副乳は、乳頭だけの場合もあれば、
乳腺組織まで持ち合わせていることもあって
乳腺組織があると、出産すると
母乳分泌ホルモンであるプロラクチンが働いて、
副乳にもおっぱい同様の膨らみができ、
母乳が滲みます。
第1子で経験しなかったことが
第2子で経験できたり、
「なんだこれは〜!」なハプニングが起きたり
妊娠出産は不思議だらけの世界ですね。
「そうなんですね・・・
やっぱりこれは副乳で間違いないんですね?
ガンじゃないですよね・・・?」
ちゃうちゃう。
ちゃいますがな〜。
ガンのしこりはこんなに大きくないですよ。
妊娠中に脇のしこりを見つけても
痛みがなければ産後まで放置で大丈夫です。
赤く腫れたり痛いときは保冷剤などで冷やしてくださいね。