ななちゃんの『特性』
今日は小学校の個人懇談に行ってきました。
わがやの小学4年生、ななちゃんは
軽度の発達障害を持っています。
感情の振幅や、微妙な心のニュアンス、
誰でも直感的に理解できるような人の気持ちを
敏感に感じ取って場の空気に合った行動をとるのが
苦手という『特性』があります。
大多数と異なる個性的な行動をとったり、
頭に浮かんだまま、無神経な態度や
言葉を発してしまう傾向があって、
こういう子どもは、デリカシーがなく何かが欠けている。
原因は、親の育て方?
家庭環境になんらかの問題があって
健全に育っていないのでは?
と勘違いされがちです。
でも、彼女のような特性を持つ子たちは
何かが欠如しているというより
実は違う角度から世界を見つめているだけなんです。
誰が悪いわけでもなく、ましてや育て方には関係なく、
先天的な脳の特性のために物事の捉え方や視点に、
大多数のそれとズレがあるのだと
わたしは認識しています。
発達障害といっても、
そのすべてに共通する脳の特性が
あるわけではないんですよね。
平均的な軌跡とは異なるプロセスを示すところに
その特徴があって、
表出される個性は十人十色。
例えばななちゃんは、
環境音をシャットアウトすることが難しいという
特性を持っています。
大多数は、雑音だらけの環境の中でも
自分の名前が呼ばれれば聞き取れるように
脳が巧みに情報を処理してくれますが、
先生の歩く靴音、隣の子が教科書をめくる音、
チョークの音、風の音・・・
騒音の多い教室では
いろんなノイズが同じ音量で同時に耳に入ってきて
日によっては机にじっと座って
授業を聞くことが難しくなることがあります。
ノイズの中で、
さらに抽象的(自分のすべきことが具体的に示されない)
な内容の授業は大の苦手。
そのかわり、静かな環境で、
わかりやすく整理された情報だけが
決まった文字の大きさで提供される本などには、
人並みはずれた集中力を発揮します。
発達障害は、
どこからが〝障害〟で、どこからが〝正常〟という
明確な線引きはできません。
彼女は、会話が成り立たないわけでもなければ
言われたことができないわけでもありません。
ちょっと変わった子だというだけで
家では弟妹の世話も率先してしてくれる、
普通の小学4年生です。
ただ、まだたった10歳なので、
周囲の友達も幼く配慮が足りません。
よって、彼女の特性は理解されにくく、
つまり、
友達との良好なコミュニケーションに
困難を示しがちになってしまいます。
重い自閉傾向のある子はわかりやすいですが
軽度になると、見分けが難しくなります。
言葉の理解力もあり、知性も十分備えていて、
一見、何の障害も感じられないので、
側からみて「ちょっと個性の強い子ども」として
普通に扱われている場合も多いです。
でもそれって、本人にとっては
本当にしんどい毎日でしょうね・・・。
ななちゃんの場合、
赤ちゃん時代はまったく違和感なく
他のきょうだいと同じように
元気に育っていました。
ことばの発達、運動能力の発達も
気になる遅れはなく、
保育園時代はフレンドリーで
お友達とも上手に遊ぶことができました。
おむつも他の子と同じように自然に外れ、
ごくごく普通の幼児でした。
1年生になる頃、
他のきょうだいの同時期に比べて
ちょっと幼いかな〜という印象はありましたが、
これだけ子だくさんだからこそ、
同じ遺伝子を受け継ぎながらも
いろんな個性の子がいるのは実感していました。
なので、ななちゃんは
子どもらしく天真爛漫な子との認識で
問題視していませんでした。
あれ?と思ったのは
彼女が小学校に入学してからです。
彼女はわたしの7番目の子。
過去に6人の子どもたちを小学校に
送り込んできました。
みんな同じように育ててきて、
小学生になった子どもたちには
母としてきょうだい同等の関わり方を
してきましたが
まず、彼女は
10までの数字の認識が
どうがんばってもできませんでした。
一桁の計算で、早くもつまずいてしまいました。
次に、漢字の学習が始まったときに
漢字ドリルが書けません。
やる気があるときは、やればやれるのですが、
気分が乗らないと一切できません。
やりたくないのに「やれ」と言われると
極度のストレスになって、
イライラがノートにぶつけられます。
当時の彼女の漢字ノートは、
どのページを開いても、筆圧の調整ができず、
力一杯に殴り書きされた
文字にならない真っ黒なグチャグチャの線だらけ。
2年生になると、次第に授業に
参加できなくなっていきました。
クラスメートがワイワイガヤガヤしている環境が
苦痛でじっとしていられず、
ふら〜っと廊下に出て行ってしまう日が
続きました。
7〜8歳にもなると
放課後も友達と遊ぶ約束をしてくるのが普通ですが、
その兆候がいっさい見られません。
学校では、黒か白か。
正義感のかたまりが彼女の思考を支配します。
ルールを守らないことに嫌悪感を示し、
掃除をさぼった男子などを必要以上に
攻撃してしまいます。
「まぁいっか」グレーをOKとすることができず、
友達に正論をぶつけてばかりで
応用がきかないため煙たがれました。
担任の先生から、
学習どころの話ではないと言われました。
それ以前に、基本的生活習慣のレベルで多々の問題あり、
保育園児を指導しているようだと
指摘されたこともありました。
仕事ばかりしていて
わたしはママとして
彼女にしっかり関われていないんだろうか?
気持ちを寄せてあげられていないんだろうか?
わたしのせい?
悩んだこともありました。
他のきょうだいたちは6人とも
同じ関わり方で全員なんなく育ってきました。
学年それぞれの発達段階を、
ちゃんとクリアしてきました。
それなのに、なんで?
どうしてななちゃんだけ
こうなっちゃうんだろう・・・
ちょっとした友達の一言に過剰反応し、
感情が抑えられなくなって大爆発。
物は投げるわ、机は蹴り倒すわ、
3年生になると、とうとう教室どころか
学校を飛び出してフラフラ歩いているところを
地域の方に保護されたり、
勢いあまって教室のガラスを割ってしまったり、
他の教室に立てこもって、誰も中に入れず
みんなに迷惑をかけ、全職員総動員で説得にあたるなど、
次から次へと問題を起こしてくれました。
ここまでくるともう、
さすがに普通学級は厳しい・・・
みんなに迷惑かかってる上に、
なによりもななちゃん本人が辛そうです。
今のままの環境で過ごすことに
限界を感じました。
そろそろなにかしら、
アクションしたほうがいいタイミングかもしれない
そう思うようになりました。
〝発達障害〟
なんとなく感じてはいたけど、
間違いなく、そうだろうな。
そこで改めて彼女の特性を整理してみました。
・誘われたら遊ぶけど、
基本的にはいつもひとりで遊んでいる
・物事をストレートに表現する。
場の空気を読まずに言いたいことを言う
・会話の前後のニュアンスから
相手の伝えようとしていることを
感じ取ることができない
・視点がズレるので、話していて他者は
なんともいえない違和感を感じる
・損得を考えた言動ができない
・身の回りのことにやたらと手間取り
歯磨きなど、基本的なことが
言われないとできない
・運動が苦手
・いまだになんでも口に入れる
・関心を持つことには専念できるが、
他のことにはまったく価値観を持たない
・自己中で人の目線に立って考えるのが苦手
・冗談が通じず感情のコントロールができない
・知らないこと、予測がつかないことに 極度の不安を感じる
・抽象的概念が理解しにくい
「てきとーにやっといて」が通じない
ほらほら〜
『自閉症スペクトラム』の特性と
ピタリと合うんですよね〜。
こりゃもう間違いないわ、ということで
児童精神科を受診、
心理検査を受け、思ったとおり軽度の発達障害だと
診断されました。
知的能力には問題ないけれど、
得意なことと不得意なことの
アンバランスが彼女の生きにくさに
つながっているという診断でした。
具体的な彼女の持つ特性と、
それらに対しての周囲の関わり方のコツがわかって
わたしはスッキリしました!
悩む必要がなくなりました。
4年生の2学期からは、
とくに集中力を必要とする教科だけ
特別支援学級に抽出してもらっています。
他の授業は、本人のできる範囲で
みんなと一緒に参加、
気分が乗らないときは自分の席で静かに
読書したりして過ごしているようです。
発達障害って言われると
親としては絶望的な気持ちになるかもしれません。
みんなそれぞれ特性が違うけれど、
ななちゃんのように、軽度の発達障害や
個性と特性を行ったり来たりするような
グレーゾーンの子どもたちに関しては、
おおげさにとらえなくても
以下のようなことを念頭に置いて関わってあげると
子どもは劇的に穏やかになります。
・あれもこれも、いろんなことをまとめて伝えない
・具体的に簡潔にわかりやすく伝える
・イラストや文字、動画で示しながら伝える
・順番を決めて作業をする
・静かな環境を与え、やりたいことを考えてゆっくり準備をさせる
・がんばったときはほめ、子どもに対して尊敬と信頼を示す
ななちゃんは、
自分なりの予定を立てていることが多いので
突然乱れさせると機嫌を損ねてしまいます。
家には子どもがたくさんいるので、
彼女が落ち着ける空間を確保するのはなかなか難しいのですが、
なるべくそういう時間を持てるよう
努力しているところです。
理解力はあるので、理由がわかりさえすれば
彼女は問題を起こすことはないんです。
彼女を変えよう!というよりも
周囲の大人が理解してあげようという気持ちが大事。
決して叱りつけることがないように、
ひとつずつ静かに優しく丁寧に教えること。
見守る側の役割としては、
少しの変化にも敏感に気づいてあげることです。
前よりもできるようになったことには
オーバーアクションで反応してあげて、
本人にわかりやすく伝えるようにしています。
成長できている。
達成に向かっている。
そんな実感、もっと成長できるかもという希望、
考えたことを楽しんでできる充実感、
これらは、力強く生きていくための力になると思います。
好きなことはとことん楽しめるのが
彼女の魅力であり、才能です。
だから、周りの大人は
環境を整え、よき理解者となり、
子どもの心と体の成長を応援していきたいと思います。
普通学級の担任の先生、
特別支援学級の先生
学校と家庭をつなぐ毎日の交換日記も欠かせません。
保育園の連絡帳もあるので、
わたしは毎晩、書いてばっかりで
全部こなすのに1時間近くかかってますが、
学校での様子、家庭での様子、
支援する全員が共有して
関わり方をともに考えることができるのは
とても大事な要素だと思っています。
書くのが好きで、よかったわ〜〜^ – ^
2学期からの特別支援学級への入級によって
彼女は自分の居場所を見つけることができました。
しんどいときは堂々と、支援学級に
逃げることができる環境。
それは学校生活を送る上で、ベストな選択だったと思います。
『平均』とか『普通』とか『標準』とか。
大多数の姿を基に形成された社会に
特性のある子を無理に合わせ込むように
矯正することではなくて、
幅広い個性を包みこむ社会のあり方を考え、
その構築を目指すことが大事だと
改めて感じる今日このごろです。
『個性』を突き抜けた
『特性』があったって、いいさ!
天真爛漫で優しいななちゃん。
人間的に豊かに・・・
笑顔を絶やさず育ってね!