「乳質がよい・悪い」「前乳・後乳」って、なんやろな?
母乳の質ってなんなんでしょう。
色、温度、ねばり、匂い。
それらはたぶん母乳に含まれる脂肪の量、
乳糖、ナトリウムやカリウムなど塩化物、タンパク質の量を
「質」ととらえているのだと思います。
乳腺炎のときには、乳腺葉(母乳を作る場所)から
乳管に向かってタンパク質やナトリウムが
過剰に排出されていき、
乳腺内の母乳に含まれる乳糖やカリウムが
乳管の外の組織に漏れ出すなどして、
通常とは異なる母乳の成分になってしまいます。
このように、乳腺炎を代表する大ピンチの乳質は
塩辛く生臭くなって
極端にイケてないわけですが、
正常な状態でも
母乳の成分というのはいつも同じではなく
いつも微妙に変化しているんです。
母乳の中の脂肪は、
朝は少なく午後のほうが多く
24時間、量が変わります。
飲ませ始めの脂肪分の少ない母乳を「前乳」
飲ませ終わりの脂肪分の多い母乳を「後乳」
と呼び、
飲み始めと飲み終わりで成分と味が違う、
ということが、
母乳の素晴らしさの真髄だ!
というような表現をされることが多いです。
『飲み終わりの頃の「後乳」は
脂肪やビタミンが多く含まれ
赤ちゃんの成長発達に必須である』
なので、片方のおっぱいを
空になるまでしっかり飲ませることで
栄養価の高い「後乳」を与えることができる、と。
うん・・・確かにそうなんだけど・・・
乳腺というのは、15本ぐらいあって
その中でも太いものが7~8本あります。
乳輪の表面側に分布する乳腺と、
乳輪の奥のほうに分布する乳腺、
乳輪付近の乳腺は例えるならば、
紐を10本ぐらい束ねた状態になっています。
赤ちゃんが飲んだり、搾乳したりするときに、
最初に刺激を受けて反応するのは
乳輪の表面付近にある乳腺です。
それから時間差でだんだん中心に向かって
奥の乳腺にも刺激が伝わり、
表面の乳腺が反応(射乳反射)してから
何分か後に、追いかけるようにして
乳輪の奥、中心にある乳腺が反応し始める・・・
おっぱいマッサージをしているわたしの指先に
そんな感覚が伝わってきます。
最初の射乳が落ち着いて、一旦母乳分泌量が
低下したあと、さらに乳輪を刺激していると
次の射乳反射が来ます。
だんだん、乳輪の奥のほうの
乳腺体の硬さが和らいで、
柔らかく芯がなくなっていくのを感じます。
つまり、時間遅れで、
最初に射乳反射を起こした乳腺より
もっと奥の乳腺が反応した感触を感じるんです。
「脂肪分は射乳反射が起こるたびに
増えていく。」
「後乳」の理論、
その事実に異論はありません。
ただ、
すべての乳腺から
同時に母乳分泌が起こるわけではないから
なんとなく「よい乳質」とか「後乳」を
簡単に評価するのって
どうなんかなぁ~ってモヤモヤするんですよね。
よく分泌されている乳腺(乳輪の表面)と
うまく分泌されていない乳腺(乳輪の奥)が
タイムラグで次々に射乳反射を起こし、
それぞれの乳腺、個別のペースで
母乳の成分を変化させていくのでは
ないかと思うのです。
母乳はよく出ているのに、
乳輪の奥がごりっと硬くなっているケース、
その原因は
奥の方は刺激を受けにくく分泌しにくいからだと
思っています!
(エビデンスないですっ!すみません!)
授乳間隔があいてしまったなどの理由で
うまく飲まれていなかった(時間がたった)
奥の乳腺から湧き上がってくる母乳は
最初は一見濃縮されたような、
どろっと黄色味を帯びています。
それからだんだん半透明の水分の多い
さらっとした母乳が出始めて(前乳)
その後、栄養たっぷりの濃い母乳に
変化していきます(後乳)。
おっぱいケアのとき
乳頭の表面の7~8本の乳管開口部から
出てくる母乳をよく観察すると
さらっとしてたり、どろっとしてたり、
半透明だったり、黄色みが強かったり
色や性状は、
7~8本それぞれ異なるんですよ。
みんな違うのに、
乳腺炎などの明らかなトラブルがない状態で
「乳質がどう」っていう表現で、
1人のママの母乳の状態を
よい、悪い、で評価するのは
ちょっと短絡的すぎるんじゃないか・・・?
前乳と後乳の理論だって、
乳輪表面の刺激されやすい乳腺は
授乳開始から早期に
脂肪の少ない前乳→脂肪の多い後乳に変わるでしょうし、
乳輪奥の刺激されにくい乳腺は
表面の乳腺からずいぶん遅れて前乳→後乳に
変わるだろうと思うのです。
いや、もしかしたら、
奥にある乳腺は、何度も射乳反射を促すほどの
刺激さえ、受け取れへんかもしれんやん?
その場合、奥に溜まりすぎた母乳は
理論上、脂肪よりも乳糖が増えているはずです。
乳糖が多い母乳は消化に時間がかかるので
緑色の水っぽいうんちの原因にもなりますが、
表面の刺激を受けやすい乳腺から分泌される
母乳は早々に後乳に変わっているだろうから、
赤ちゃんが一度に飲む母乳は、
乳糖が多く消化しにくい濃縮母乳と
さらっと水分が多く脂肪分が少ない前乳と、
栄養価の高い後乳と
全部が入り混じったものが飲めるはず。
すべての乳腺において、
後乳に変化する前に
前乳で授乳終了~!
ということはないんじゃないのかなぁ・・・。
母乳の濃度の変化を検証するには、
乳腺の位置や刺激の受け方を考慮した上で
それぞれの乳腺の母乳成分がどうなのか?を
見極めていく熟練した観察力と、
複雑な検証技術がなければ
到底不可能なんじゃないかと思います。
浅くくわえて飲めば、
おそらく後乳には変化しにくいでしょう。
常に浅いなら、一部の乳腺からの分泌は
前乳のさらに前段階の
濃縮された母乳から・・・ということになるでしょう。
深く吸わせれば
前乳に混じって後乳が同時に出てくる乳腺も
存在すると思います。
赤ちゃんがよく眠って授乳間隔があけば
母乳の成分もまた変化する可能性があります。
こうやって深掘りして考えていくと
乳頭の先端、7~8本の乳管開口部から
一斉に分泌される母乳の性状だけで
「乳質がよい」「乳質が悪い」「前乳」「後乳」ということは
言っちゃいけないんじゃないかと思うのです。
母乳はさまざまな条件で
濃度が変化しますが
ただ、その「さまざまな条件」が
何か?というところは
まだまだわからないことだらけです。
現時点で、何が「乳質がよい」状態なのか?
何が「前乳」で、どこからが「後乳」なのか?
何分吸わせたら後乳に変わるのか?
そんなもん、
みんな違うに決まっとる!( *`ω´)
科学的によくわからず、定義さえできないのに
「栄養価の高い後乳までしっかり飲ませましょう」
とママたちに指導したら、
ストレスを与えてしまうことに
なるんじゃないかと思うんです。
後乳を飲ませることで
赤ちゃんにどんな影響があるのか
はっきりしたエビデンスもないのに、
「よい母乳」というものが存在するんだよ、
と教えられれば
「よいおっぱい」のために、
ママたちは苦しまされます。
母乳をあげていても
赤ちゃんがグズってばかりなら、
「後乳をうまく飲めていないからだ・・・」と
悩んでしまうかもしれません。
ミルクのママなら、
「ミルクは母乳と違って
最初から最後まで味も成分も変化しない」と
あるで赤ちゃんの成長発達に悪影響を及ぼすかのような
引け目を感じさせてしまうかもしれません。
母乳に含まれる脂肪の量には個人差があり、
赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけ与えれば
前乳と後乳のバランスも取れて
赤ちゃんの身体に負担がかかることなく
必要量が摂取できるようになっていると
わたしは思っています。
もちろん、わたしのこの感覚に
科学的なエビデンスはありません。
経験的主観でしかないし、
仮説にしかすぎませんが・・・。
でも、浅吸いの赤ちゃんも、
授乳間隔があいて濃縮された前乳を飲む赤ちゃんも、
片乳授乳で後乳(と思われる)を飲んでいる子も、
頻回に左右のおっぱいを交代して
前乳(と思われる)ばかりで授乳を終えている子も、
みんな、すくすく育ってるやん?
精神面を考えても、
欲しいときにもらえることで
赤ちゃんとの基本的信頼感が培われていくはずって
わたしは信じています。
「乳質がいい」って
ほんと、何をもってそう言うのでしょうね?
正直、よくわからないです。(おいおい・・・^^;)
「乳質のいいおっぱい」を強調することや
「後乳のすばらしさ」ばかりを語ることは
ときにママたちを追い詰め、
ミルクを使うことへの罪悪感など否定的な感情に
つながる危険性があると思います。